サラ金やカード会社からの借金は5年で時効になりますが、借りてから5年が経てば自動的に消滅時効が成立するというわけではありません。
なお、期間が満了すれば自動的に権利がなくなってしまうのを除斥期間といいますが、時効期間には中断があるので除斥期間とはその点において異なります。
つまり、借金の消滅時効においては、5年の間に一部でも借主が借金の弁済をすれば時効は中断して、消滅時効期間は中断したときからさらに5年となります。
よって、毎月弁済しているうちは、弁済のつど時効が中断し、最後に弁済したときから時効期間がスタートするわけです。
そもそも時効制度は権利の上に眠る者を保護しないとか、証拠を長期間にわたって保全することの困難さを救済するために作られた制度ですが、借主が一部弁済したり、債務承認書を貸主に差し入れたりして、借金の存在を認めているのであれば、債権者である貸主は権利の上に眠っているとはいえないですし、また、債務承認書によって証拠が新たになっているのであれば、その時点から時効が始まるとしても時効の本質に反しないからです。
では、どのような場合に時効が中断するかですが、中断事由には大きく分けて以下の2つがあります。
1. 請求
2. 承認
請求は債権者側で、承認は債務者側の行動です。
まず、請求を見ていきますが、基本的に時効を中断させる請求というのは裁判上の請求のことです。
裁判上の請求というのは、訴訟や支払督促が該当します。
よって、単に債権者が書面上で一括請求や訴訟予告通知のようなものを送ってきても、それでは時効が中断しません。
しかし、このような裁判外の請求であっても6か月間だけ時効の完成を遅らせることができます。
これはどういうことかといいますと、債務者が一部弁済したり、債務(借金)を承認したのであれば、債務があるという事実関係は明確であるといえるので時効の中断事由に該当しますが、債権者が口頭ないしは通常の文書で請求しただけでは、それだけでは事実関係が明確になったとはいえないので、裁判外の請求の場合は6ヶ月以内にあらためて裁判上の請求をしなければいけないと定めているわけです。
裁判外の請求で時効を中断させるのは、例えば時効成立まであと3日しかなくて裁判上の請求をしている時間がない場合に、ひとまず文書(実務上は配達証明付内容証明の速達)で債務者に請求するようなケースです。
とりあず内容証明郵便で時効を中断させておけば時効の完成が6か月間延びるので、その間に訴訟を起こせば時効の完成を阻止することができます。
なお、裁判上の請求による6ヶ月の時効の中断は催告書が相手に到達したときで、到達したことは債権者が証明しなければいけません。
そのため、普通郵便でなくて配達証明付の内容証明郵便を速達で出しておくのが一番安全で確実です。
もし、時効完成まで残りが1日しかなく、口頭で借金の催促をする他ないのであれば、立会証人を2人くらい連れて行くなり、債務者である借主から「何月何日に借金の催告を受けました」等と一筆書いてもらうのが安全です。
また、裁判外の請求による時効の中断は一回しか使うことができませんので、6ヶ月毎に繰り返し使うことはできません。
このように時効の中断事由の一つである請求は原則的に裁判上の請求のことを指し、裁判外の請求はあくまでも緊急事態の例外という位置付けなわけです。
次は、裁判上の請求ですが、一般的には通常の民事訴訟の提起が該当します。
訴訟では債権者である原告が訴状を裁判所に提出するわけですが、時効の中断は訴状を裁判所に提出したときに生じます。
つまり、訴訟では訴状が相手に送達される前に時効の中断の効力が発生することになります。
この点、裁判の請求では催告書が借主に到達しなければ時効の中断の効力が発生しないので、相手が行方不明のときには裁判外の請求は使えません。
しかし、訴訟では相手が行方不明であっても訴状を裁判所に提出した時点で時効が中断しますので、この点が裁判外の請求とは全く異なります。
なお、訴訟でも相手が行方不明だと訴状を被告である借主に送達することができませんが、そういった場合は公示送達という方法を取ることができます。
公示送達というのは裁判所の掲示版に「原告から被告に対し訴訟が出されたので訴状を取りに来てください。2週間経過しても取りに来ない場合は送達されたものとみなす」といった内容を掲示し、実際に2週間が経過した場合は訴状が被告である借主に送達されたものとみなして裁判を進行させる手続きです。
裁判を進行させるといっても、実際には被告である債務者は行方不明なので裁判所に出廷することはないため、原告である債権者の主張どおりの判決が出ることになります。
多額の借金を背負った債務者が行方不明になることは決して珍しいことではないので、相手が行方不明であるような場合に時効を中断させるのであれば、公示送達を利用して訴訟を起こすのが一番確実です。
ところで、裁判手続きが長引いた場合、裁判が継続している間はずっと時効も中断していますが、もし、訴訟を取り下げたり、訴訟が却下されてしまうと訴状を提出したときにさかのぼって中断の効力はなくなります。
また、原告である貸主が裁判に勝ってその判決が確定した場合は、判決確定のときから10年間は時効が延長されます。
なお、確定判決の時効はその請求している権利を問わず一律10年で、裁判上の請求には訴訟の他に支払督促や調停も含まれます。
支払督促についてはまた次回以降に詳しく説明します。
<訴訟を起こして時効を中断させてくる主な債権回収業者>
・アイアール債権回収(アコム)
・アビリオ債権回収(プロミス、モビット、レイク)
・アウロラ債権回収(SKインベストメント、CFJ)
・エムアールアイ債権回収(エポスカード、丸井)
・エムユーフロンティア債権回収(モビット)
・エムテーケー債権管理回収(ディック、CFJ)
・エーシーエス債権回収(イオンクレジットサービス)
・オリンポス債権回収(ディック、CFJ)
・SMBC債権回収(三井住
友銀行)
・ニッテレ債権回収(クレディセゾン、ローソンCSカード、ドコモDCMX)
・パルティール債権回収(アプラス、Jトラストグループ)
以上の債権回収から訴状が届いた場合は、すでに消滅時効が完成している場合もありますので、まずは千葉の稲毛司法書士事務所にご相談ください。
【参考】