相続登記のパターン(遺言、遺産分割、法定相続)
相続登記は大きく分けて3パターン
土地や建物、マンションなどの不動産の所有者が死亡した際は、相続人名義に変更しなければいけません。これを相続登記といいますが、大きく分けると3つのパターンに分かれます。
まずは遺言書がある場合とない場合に分かれ、遺言書がない場合の方はさらに遺産分割をする場合としない場合に分かれます。
<ここがポイント!>
☑ 相続登記は遺言による場合、遺産分割による場合、法定相続による場合の3パターンに分かれる
遺言による場合
亡くなった被相続人が遺言書を残していた場合、遺言書の内容に従った相続登記をおこないます。
その際は、遺言によって不動産を相続する方(もしくは遺言執行者)が単独で相続登記をおこなうことができます。
なお、遺言書がある場合でも、相続人全員が合意すれば、遺産分割による相続登記をおこなうことも可能です。
また、公正証書遺言であれば裁判所での検認手続きが不要ですが、それ以外の遺言書(自筆証書遺言など)はすべて検認手続きを受けなければいけません。
また、自筆証書遺言だと司法書士などの関与がなく作成されているものが圧倒的に多いですが、ルールが守られていない自筆証書遺言書だと相続登記に利用できないので、そういった場合は遺産分割もしくは法定相続を選択せざるを得ません。
遺言による場合の必要書類
☑ 遺言書
☑ 被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
☑ 被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
☑ 不動産を相続する方の戸籍謄本
☑ 不動産を相続する方の住民票
遺産分割による場合
当事務所への相続登記の依頼で最も多いのが、被相続人が遺言書を残しておらず、相続人の間で遺産分割協議をおこなうパターンです。
遺産分割をおこなうことで、法定相続分に縛られることなく、自由に分配することができます。
ただし、遺産分割が成立するためには相続人全員の合意が絶対条件です。もし、1人でも反対している相続人がいれば、遺産分割協議は成立しません。
なお、相続人同士の遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
そして、調停でも話がまとまらない場合は自動的に審判手続きに移行し、裁判所が遺産の分配方法を決定します。
相続人の間で遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印して印鑑証明書を添付します。
当事務所に依頼された場合は、遺産分割協議書の作成も司法書士がおこない、それに相続人全員が実印を押印することがほとんどです。
遺産分割による場合の必要書類
☑ 被相続人が出生してから死亡するまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
☑ 被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
☑ 相続人全員の戸籍謄本
☑ 不動産を相続する方の住民票
☑ 相続人全員の印鑑証明書
☑ 遺産分割協議書
法定相続による場合
遺言書がなく、相続人同士で遺産分割協議をおこなわない場合、法定相続分に従った持分割合で相続登記をすることができます。
なお、法定相続による相続登記は、保存行為の一種なので相続人の1人からの申請で手続きが可能です。
相続人が初めから1人の場合が法定相続に該当するのは当然ですが、もともと複数の相続人がいたにも関わらず、その他の相続人が家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしたことで、結果的に相続人が1人になった場合も法定相続に該当します。
この場合は相続放棄をしたことを証明するために相続放棄申述受理証明書という書面を添付しなければいけません。相続人が3名以上いる場合は、法定相続による相続登記はあまりお勧めできません。
なぜなら、今後、その不動産を売却したり、銀行からお金を借りるために担保に入れるにしても、共有者全員の同意が必要になりますし、売買による所有権移転登記をするにも共有者全員が手続に関与しなければならないからです。
この点、共有者が2名であれば、今後の不動産の処分についても1対1の話し合いなので、比較的まとまりやすいですが、3人以上になると人数に比例して話がまとまらなくなる傾向があります。
また、二次相続が発生した場合、さらに共有者の数が増えてしまうので、結果として不動産の処分ができなくなる恐れが生じます。
こういった理由から、相続人が複数いる場合は、遺産分割によって特定の相続人が単独で不動産の所有者になることが多いのが実情です。
もちろん、以上のようなデメリットを考慮しても法定相続が妥当な場合がありますのでお気軽にご相談ください。
法定相続による場合の必要書類
☑ 被相続人が出生してから死亡するまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
☑ 被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
☑ 相続人全員の戸籍謄本
☑ 不動産を相続する方の住民票
関連ページ
☑ 数次相続による相続登記
☑ 代襲相続による相続登記
☑ 遺言書の文言と登記原因の関係(相続、遺贈)