相続登記で認知症の相続人がいる場合

相続人の中に精神上の障害 (知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方がいる場合、その方が不利益を被らないように成年後見制度の利用を検討します。

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成年後見制度は、被後見人である本人の精神障害の程度によって、後見、保佐、補助の3段階に区分されますが、成年後見の申立て全体の約8割を後見が占めているのが現状です。

ここがポイント!

相続人の中に精神上の障害により判断能力が十分でない方がいる場合、成年後見制度の利用を検討する

裁判所から選任された後見人は、精神障害のある本人に代わって、預貯金や不動産などの財産管理や入居施設との契約や医療、介護、療養看護に関する契約をおこないます。

また、後見人は財産管理業務の一環として、本人に代わって遺産分割協議へ参加することもできます。

言い換えれば、後見人を除外したまま他の相続人だけで遺産分割をしても無効です。

ここがポイント!

後見人の業務は財産管理と身上監護であり、後見業務の一環として本人に代わって遺産分割協議に参加する

相続登記によって不動産の名義を変更する際に相続人の中に認知症の方がいる場合、当該相続人に後見人を付けなければならないのかどうかについては遺産分割による相続登記なのか、法定相続による相続登記なのかによって異なります。

遺言による相続登記では遺言書で不動産を相続することになる方(もしくは遺言執行者)が単独で相続登記を申請することができるので、その他の相続人に認知症の方がいても相続登記の申請に影響はありません。

遺産分割による場合

遺産分割協議は相続人全員が参加しておこなわなければいけないので、相続人の中に認知症の方がいれば、後見人を選任した上で、後見人をその方の代理人として遺産分割協議に参加させる必要があります。

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後見人が遺産分割協議に参加した場合、本人の財産保護の観点から最低でも法定相続分に相当する遺産の分割を要求してくるので、当該相続人に法定相続分に相当する金銭等を与えない限り、不動産をその他の相続人の単独名義に変更することはできません。

法定相続による場合

あらかじめ法律で決められた法定相続分に従って相続登記をする場合、相続人1人からの申請で相続登記をおこなうことができます。

そのため、相続人の中に認知症の方がいた場合でも、その他の相続人からの申請によって、法定相続分どおりの相続登記が可能です。

つまり、認知症の相続人を関与させなくても相続登記できるというわけです。

例えば、被相続人Aが亡くなり、その相続人が高齢で認知症の妻Bと子Cの2人だけの場合、子Cのみが申請人となり、法定相続分どおりに、妻Bと子Cの2分の1ずつの相続登記をおこなうことができます。

その後、妻Bが死亡した場合、相続人は子Cのみなので、最終的に妻Bに後見人を付けなくても法定相続による相続登記を2回おこなうことで、子Cが不動産の単独所有者になることができます。

しかし、登記手続き上は、不動産の名義人になっても申請人にならなかった者(上記の例では妻B)には、従来の権利証に代わる登記識別情報が交付されないという取扱いがされています。

つまり、妻Bも登記上は2分の1の所有権があるのですが、妻Bの持分については権利証に代わる登記識別情報がないわけです。

とはいえ、当該不動産を売買したり、担保に入れる予定がないのであれば、妻Bの持分に関して登記識別情報がなくても特に不都合はありません。

将来的に妻Bが死亡した際の子Cへの相続登記においても、妻B持分の登記識別情報が必要になることはないので、相続人の中に認知症の者がいる場合は、法定相続による相続登記も選択肢の一つになります。

もちろん、妻Bに後見人を付けた上で妻Bと子Cの2人が申請人となって相続登記をおこなうことも可能です。

この場合は、妻Bの持分についても登記識別情報が法務局から発行されます。

ここがポイント!

法定相続による相続登記であれば、相続人1人からの申請が可能なので、認知症の相続人に後見人を付けなくても、不動産の名義変更ができる

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