相続分がないことの証明書(特別受益証明書)

特別受益とは

特別受益とは、相続人の中に被相続人から生前に学費や生活費、結婚費用等で特別に財産を付与されていた者がいた場合に、他の相続人との間の不公平を是正するために設けられている制度です。

<特別受益の具体例>

婚姻、養子縁組のための贈与

☑ 持参金
☑ 嫁入道具
☑ 支度金
☑ 新居など

※ 結納、挙式費用は原則的に特別受益に該当しない

生計の資本としての贈与

☑ 不動産の贈与
☑ 住宅資金
☑ 開業資金
☑ 他の兄弟が受けていない高等教育など

※ 新築祝いなどは原則的に特別受益に該当しない

特別受益証明書とは

相続分を超える特別受益者がいる場合、当該相続人が作成した相続分がない旨の証明書(印鑑証明書付)を作成することで、その者を除く相続人で遺産分割協議や相続登記をおこなうことが可能となります。

登記実務上は、特別受益証明書は相続分がないことを証するものであればよいとされているので、贈与された財産の種類や価額、受贈年月日などを具体的に記載する必要はないとされています。

また、一定の方式も要求されていないので、遺産分割協議書の中で特別受益者に相続分のない旨が明らかにされているものでも差し支えありません。

もし、特別受益者Aが相続登記をする前に死亡した場合、特別受益者Aの相続人全員が「Aは被相続人から特別受益を受けており、相続する相続分がない」旨の証明書を作成することで相続登記をすることができます。

また、代襲相続が生じた場合において、被代襲者が特別受益を受けていた場合も、代襲相続人全員が作成した証明書を提出して相続登記をすることが可能です。

<特別受益証明書の見本>

証明書

私は、〇〇との婚姻(養子縁組)の際(または生計の資本として)、被相続人からすでに財産の贈与を受けており、被相続人の死亡による相続については、相続する相続分の存しないことを証明します。

平成〇〇年〇〇月〇〇日

千葉市稲毛区〇〇町○番○号
被相続人 〇〇〇〇
相続人  〇〇〇〇 印

 

特別受益証明書の問題点

特別受益証明書には、上記のとおり受贈年月日等を具体的に記載する必要がないので、実際には当該相続人が贈与を受けていない場合でも利用されることがあります。

しかし、いったん特別受益証明書を作成してしまうと、あとになって本当は贈与を受けていなかったと主張しても認められないことがあります。

実際に相続分と同等もしくはそれ以上の贈与を受けているのであれば、相続分がないことの証明書を作成しても問題ないと思いますが、例えば、特定の相続人を遺産分割協議から除外するために特別受益証明書を作成するのは、後日のトラブル防止の観点からもやめた方がよいでしょう。

よって、被相続人から生前に贈与を受けたことがないにもかかわらず、他の相続人から特別受益証明書への署名押印を要求されても応じない方が安全です。

もし、特別受益を受けていないのであれば、原則どおり相続人全員で遺産分割協議をおこない、話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成するのが実態とも合致しています。

<ここがポイント!>
☑ 贈与を受けていないのであれば、原則どおり特別受益証明書ではなく遺産分割協議書を作成すべき

特別受益と相続放棄の違い

特別受益証明書を作成することで、相続放棄や遺産分割をすることなく、簡単に相続登記をすることができるため、事実上の相続放棄といわれることがあります。

しかし、裁判所に申し立てをする相続放棄と特別受益証明書の作成はその効果において決定的に異なる点があります。

それは、被相続人に借金があった場合の取扱いです。裁判所へ相続放棄を申し立てると相続放棄申述受理通知書が交付されます。

これにより、当該相続人は初めから相続人ではなかったという効果が発生するため、プラスの財産のみならず借金などのマイナスの財産もすべて承継しないことになります。

これに対して、相続人の間で特別受益証明書を作成しても、それはプラスの財産に関して当該相続人に相続分がないことを証明しているだけなので、被相続人に借金があったような場合には、特別受益者である相続人も法定相続分にしたがった割合で借金の支払義務を負うわけです。

よって、特別受益証明書を作成したからといって、借金などのマイナスの財産の支払義務がなくなるわけではないので、もし、被相続人が残した借金の支払義務から逃れたいのであれば、3ヶ月の熟慮期間内に裁判所へ相続放棄の申立てをしなければいけません。

<ここがポイント!>
☑ 特別受益証明書を作成しても借金の支払義務から逃れることはできない

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