相続登記における戸籍の提出範囲

被相続人が死亡した事実や相続人の存在、相続資格の有無を証明するために戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)などを提出する必要があります。

しかし、一言で戸籍といっても、いったいどの範囲まで提出しなければならないのかが問題となります。

司法書士に依頼された場合は、必要になる戸籍などはすべて司法書士が職権で取得することが可能です。

以下において、ケースごとに必要になる戸籍の範囲を解説します。

ここでは、遺言による相続登記ではなく、遺産分割もしくは法定相続による相続登記を前提としていています。

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ここがポイント!

相続を証明するには戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)などを提出する

登記実務では、被相続人に子が生じる可能性がある15歳ころまでさかのぼって、被相続人の戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)をすべて提出する取り扱いになっています。

よって、被相続人の死亡当時の戸籍が婚姻、転籍、改製等によって、新たに編成されたものである場合には、婚姻や転籍等の前の除籍ないし改正原戸籍の提出が必要です。

ここがポイント!

15歳頃から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)が必要

直系尊属が相続人になるのは、被相続人に子(またはその代襲相続人である孫など)がいない場合に限られます。

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よって、被相続人の戸籍をさかのぼって子がいるのかいないのか、子が相続開始以前に死亡している場合は代襲相続人がいるのかいないのかを調査しなければいけません。

そのため、被相続人の15歳頃からさかのぼって戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)をすべて提出することになります。

その上で、直系尊属間では親等の近い者が優先するので、父母が相続人になる場合には、父母の戸籍謄本を提出して、父母が被相続人の死亡時に生存していたことを証明します。

もし、父母が共に被相続人より先に死亡し、次に親等の近い祖父母が相続する場合は、父方および母方の双方の戸籍謄本が必要になります。

被相続人が養子の場合は、実親および養親の双方の戸籍謄本が必要です。

ここがポイント!

☑ 祖父母が相続する場合は、父方および母方の双方の戸籍謄本が必要

☑ 養子の場合は、実親および養親の双方の戸籍謄本が必要

兄弟姉妹が相続人となる場合は、被相続人に子(または孫などの代襲相続人)がなく、父母などの直系尊属もいない場合です。

よって、上記の「相続人が子の場合に必要になる戸籍」「相続人が直系尊属の場合に必要になる戸籍」に加えて、被相続人の父母双方の15歳頃の戸籍にまでさかのぼって兄弟姉妹の有無を調査することになります。

ここがポイント!

被相続人の父母双方の15歳頃から死亡時までの戸籍も必要になる

血族相続人(子またはその代襲者、直系尊属、兄弟姉妹またはその代襲者)がいないことを確認する必要があるので、上記の「相続人が子の場合に必要になる戸籍」「相続人が直系尊属の場合に必要になる戸籍」「相続人が兄弟姉妹の場合に必要になる戸籍」をすべて提出する必要があります。

ここがポイント!

配偶者以外に相続人がいないことを証明するためには大量の戸籍が必要

相続登記の申請書に登記権利者として記載されている者が被相続人の相続人であることを証明するためには、その者が被相続人の推定相続人であることに加えて、被相続人の死亡当時、現に相続資格を有していること(被相続人の死亡当時生存していること及び被相続人から廃除された者でないこと)を確認する必要があります。

これを証明するのが、相続人の現在の戸籍謄本です。

これにより、被相続人の戸籍上の記載と相続人の現在戸籍上の記載から、生年月日や氏名、父母の氏名および続柄、婚姻事項などによってその同一性が確認され、かつ、被相続人の死亡当時、当該相続人が生存していたことが確認できます。

ここがポイント!

相続人は現在の戸籍謄本のみの提出でOK

家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されると、当該相続人に対して、相続放棄申述受理通知書が送付されます。

しかし、相続登記においては別途、裁判所から相続放棄申述受理証明書という書面を交付してもらったうえで、これを法務局に提出する必要がありますが、当該相続人の戸籍謄本の提出は不要です。

これは、相続放棄の申立てに際して、当該相続人および被相続人の戸籍謄本の提出が求められ、相続放棄申述受理証明書には当該相続人および被相続人が表示されているので、これによりその同一性や当該相続人が被相続人の死亡当時生存していたことが確認できるからです。

これに対して、遺産分割などによって不動産を取得しなかった相続人については、遺産分割協議書および印鑑証明書の氏名、生年月日と除籍謄本の氏名、生年月日が一致していても、原則どおり当該相続人の現在の戸籍謄本が必要になります。

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これは、相続開始時における相続人の存在および相続資格の有無は、戸籍によって確認すべきとする考え方に基づくからです。

ここがポイント!

相続放棄した場合は、相続放棄申述受理証明書を添付することで戸籍の提出が不要

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