遺言書の文言と登記原因の関係(相続、遺贈)

「相続」と「遺贈」の違い

遺言書では、通常「〇〇を相続させる」との文言が使用するのが一般的です。しかし、自筆証書遺言では、相手が相続人であっても「〇〇を遺贈する」との文言が使用されている場合があります。

遺言書を用いて不動産の名義変更登記をする場合、登記原因が「相続」であるのか「遺贈」であるのかによって、どのような違いがあるのでしょうか。

なお、相続であっても遺贈であっても、相続人が新たな所有者になることに変わりはありません。

しかし、不動産手続上は、登記原因の違いによって、申請手続きに関与する者の範囲や登録免許税が変わってくるので、登記原因は非常に重要です。

そこで、相続と遺贈では、その手続きにおいてどこが違うのかをみていきます。

相続を原因とする場合

申 請 人 ➡ 遺言によって不動産を相続する者の単独申請
登録免許税 ➡ 固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)

遺贈を原因とする場合

申 請 人 ➡ 受遺者と相続人全員の共同申請
登録免許税 ➡ 固定資産税評価額の2%(1000分の20)

登記原因が「相続」の場合

遺言書の文言が「〇〇を相続させる」であれば、登記原因も相続となります。その場合、相続登記の申請は、当該相続人のみの単独申請で済みます。

つまり、他の相続人の協力なしに不動産の名義変更が可能です。

また、登録免許税も固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)で済むので、遺贈に比べて税金面でも優遇されています。

<ここがポイント!>
☑ 相続を原因とする場合は、当該相続人が単独で申請でき、登録免許税も安い

登記原因が「遺贈」の場合

遺言書の文言が「〇〇を遺贈する」であれば、原則的に受遺者(財産をもらう人)が相続人であっても、登記原因は「遺贈」となります。

ただし、この例外として、相続財産の処分を受ける者が相続人全員である場合には、遺言書の中で相続人に対して遺贈するとの文言が使われていても、「相続」を登記原因とすることができます。

これに対して、遺言書の中で相続人ではない者に対して「相続させる」との文言を使われていた場合、相続人以外の者が相続することは法律上あり得ないので、遺言書の文言に関わらず、登記原因は必ず「遺贈」となります。

遺贈を原因とする所有権移転登記をおこなう場合、申請人は受遺者と相続人全員の共同申請となります。

その結果、遺贈によって財産をもらわない相続人の協力が必要になるので、相続による所有権移転登記と比べて申請時の負担が大きいです。

ただし、遺言書の中で遺言執行者が選任されていれば、受遺者と遺言執行者との共同申請で済みます。つまり、遺言執行者がいれば相続人全員の関与は不要というわけです。

なお、遺言書で遺言執行者が選任されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることもできます。

また、遺贈の場合は登録免許税が固定資産税評価額の2%(1000分の20)になるので、相続の場合よりも税金面でも割高になっています。

ただし、受遺者が相続人である場合は、登記原因が遺贈であっても、登録免許税は相続と同じ0.4%(1000分の4)でよいとされています。

<ここがポイント!>
☑ 遺贈の場合は、受遺者と相続人全員(もしくは遺言執行者)の共同申請になる
☑ 受遺者が相続人の場合は、登記原因が遺贈の場合でも登録免許税は0.4%でよい

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