遺言執行者の選任申し立て手続き
遺言執行者とは
遺言執行者とは「遺言の内容を実現する者」ですが、遺言の執行は相続人自身がおこなっても良いので、必ずしも遺言執行者を選任しなければいけないわけではありません。
しかし、遺言書の効力が発生するのは、遺言者が亡くなった後ですから、せっかく遺言を書いても、遺言執行者がいないと相続人が実際に遺言の内容を実現してくれるかどうかがわかりません。
そのため、遺言者は、遺言の内容が確実に実現されるために、あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておくことができます。
<ここがポイント!>
☑ 遺言執行者は遺言の内容を実現するために選任する
誰を遺言執行者にするか
遺言執行者になることができないのは未成年者と破産者で、これ以外の者であれば、基本的には誰でも遺言執行者になることができます。
そのため、実務上は相続人や受遺者が遺言執行者に指定されていることが多いです。
なお、受遺者自身が遺言執行者に指定されていれば、1人で登記権利者と登記義務者を兼ねることができるので、遺贈による不動産の名義変更がやりやすくなります。
なお、遺言書の作成に司法書士が関与している場合は、そのまま司法書士が遺言執行者に指定されていることも珍しくありません。
<ここがポイント!>
☑ 相続人や受遺者が遺言執行者に指定されていることが多い
遺言執行者が選任されるパターン
遺言者が選任される場合は、以下のとおり3通りあります。
(1)遺言者が、遺言により遺言執行者を指定する
(2)遺言者が、遺言により遺言執行者の指定を第三者に委託し、その委託を受けた人が遺言執行者を指
(3)利害関係人の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任する
実務上は、(1)のあらかじめ遺言の中で指定されていることが多く、(2)は少数です。(3)は遺言書で指定されていなかった場合です。
利害関係人というのは、相続人、受遺者(遺贈を受けた者)、遺言者の債権者などです。
なお、家庭裁判所に選任してもらうには、もともと遺言書で指定されていない場合や、指定されていても遺言執行者が辞任した場合などに限られます。
家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらえる場合
☑ 遺言によって遺言を執行する人が指定されていないとき
☑ 辞任、解任、死亡、または破産手続の開始決定を受けたことにより、遺言執行者がいなくなったとき
遺言執行者の選任手続
家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができるのは、利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)です。申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所となります。
以下に、千葉家庭裁判所における必要書類を記載しておきますので参考にしてください(他の家庭裁判所では必要書類や切手代が異なる場合があります)。
申立人
☑ 利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)
申立先
☑ 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
費用
☑ 収入印紙800円
☑ 切手1927円(500円×2、80円×10、52円×1、10円×5、1円×5)
申し立てに必要な書類
☑ 遺言執行者選任申立書
☑ 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本
☑ 遺言執行者候補者の住民票
☑ 遺言書のコピー
☑ 利害関係を証明する資料(親族の場合は戸籍謄本など)
遺言執行者と司法書士
司法書士は家庭裁判所に提出する書類の作成ができるので、司法書士に遺言執行者選任申立書類の作成をお願いすることができます。
その場合、申立書の作成のみならず、遺言者の戸籍などを司法書士が職権で取得することが可能です。司法書士が遺言書の作成に関与した場合、そのまま司法書士を遺言執行者に指定することもできます。
遺言書で遺言執行者が指定されていない場合、司法書士を遺言執行者候補者として、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることもできます。
<ここがポイント!>
☑ 申立書の作成だけでなく司法書士が遺言執行者に就任することもできる
遺言執行者の選任申立手続の料金
3万円~(+実費) ※税抜き
※事案により異なりますので詳しくはお問い合わせください
司法書士報酬以外にかかる実費
☑ 収入印紙800円
☑ 戸籍謄本、住民票の手数料
☑ 郵送費、出張費
依頼した場合の流れ
来所相談
※電話、メール、ネットからご予約ください
必要書類の収集
※戸籍謄本、住民票などの必要書類を用意します
書類作成
※司法書士が遺言執行者選任申立書を作成します
申立書への押印
※申立人が遺言執行者選任申立書に押印します
家庭裁判所への申立て
※郵送もしくは持参により申立書一式を提出します
遺言執行者の就任
※家庭裁判所が遺言執行者を選任します
関連ページ
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