遺産分割協議のやり方と必要書類、司法書士費用とよくある質問
遺産は自由に分配できる
被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していなかった場合、相続人は法定相続分に従い遺産を分配するのが原則です。
しかし、遺産分割協議がまとまれば法定相続分とは全く異なる配分で遺産を分配することもできます。
たとえば、父と母とその子どもの3人家族で、父が亡くなった場合、相続人は母と子どもの2人で、それぞれの法定相続分は2分の1ですが、母と子どもの間で遺産分割協議が成立すれば母(もしくは子ども)が全ての財産を相続することができます。
<ここがポイント!>
☑ 遺産分割協議で遺産を自由に分配できる
遺産分割協議をするには
遺産分割協議が成立するためには相続人が全員参加して話し合いをおこない、遺産の分配について反対する者が1人も出ることなく相続人全員で合意しなければいけません。
例えば、相続人が3人であるにもかかわらず、2人の間でだけ遺産の話し合いをしても、それでは遺産分割協議とはいえません。
よって、遺産分割協議を成立させるためには必ず相続人全員が話し合いに参加して、一人も反対することなく相続人全員が賛成しなければいけません。
<ここがポイント!>
☑ 1人でも参加しなかったり反対すれば遺産分割協議は成立しない
遺産分割協議がまとまったら
無事に遺産分割の話し合いが成立したら、遺産の分配方法を記載した書面を作成し、その書面に相続人全員が記名もしくは署名したうえで実印を押さなければいけません。
こうして出来上がった書類を遺産分割協議書といい、これに相続人全員の印鑑証明書を添付します。
この遺産分割協議書は、預貯金や不動産等の各種財産の名義変更手続きで必要になるので、話し合いがまとまったら必ず遺産分割協議書を作成しなければいけません。
<ここがポイント!>
☑ 話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成し印鑑証明書をつける
遺産分割と司法書士
不動産の名義変更をする場合、法定相続分どおりであれば遺産分割協議書は不要ですが、遺言書がない限りは特定の相続人が不動産を単独で相続したり、各相続人が法定相続分とは異なる配分で不動産を相続するには、遺産分割協議書を作成しなければいけません。
実務上は、司法書士に相談する段階で事前に遺産分割協議書を作成していることは稀なので、司法書士が遺産分割協議書を作成したうえで相続人に署名押印してもらうことがほとんどです。
なお、遺産分割協議をする前には相続人の範囲を確定するために被相続人の出生から亡くなるまでの全ての戸籍謄本を取得して、誰が相続人になるのかを調査しなければいけません。
とはいえ、亡くなった被相続人の戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本をすべて取得するのはかなり大変な作業ですが、これらの戸籍謄本なども司法書士が職権で取得することができるので、相続人調査や遺産分割協議書の作成は、まとめて司法書士にお願いするのが安全で確実です。
<ここがポイント!>
☑ 遺産分割協議書は自分で作成するより司法書士にお願いするのが安全確実
遺産分割協議書作成の料金
1万円~(+実費) ※税抜き
※事案により異なりますので詳しくはお問い合わせください
司法書士報酬以外にかかる実費
☑ 戸籍謄本の取得費用
☑ 印鑑証明書の取得費用
☑ 住民票の取得費用
☑ 不動産の登記事項証明書および評価証明書の取得費用
☑ 郵送費
当事務所に依頼した場合の流れ
来所相談
※司法書士が直接相談に応じます
必要書類の収集
※司法書士が戸籍謄本などを取得して相続人を確定します
遺産分割協議書の文案作成
※お客様のご希望に沿った遺産分割協議書の文案を作成します
お客様に遺産分割協議書の文案を提示
※すべての相続人に文案の内容を確認してもらいます
遺産分割協議書の作成
※すべての相続人の同意が得られたら正式な遺産分割協議書を作成します
相続人が遺産分割協議書へ署名押印
※すべての相続人が遺産分割協議書に署名し実印を押します
遺産分割協議書の完成
※すべての相続人の印鑑証明書を添付します
各種財産の名義変更手続き
※遺産分割協議書を法務局や銀行などに提出して名義変更の手続きをします
話し合いがまとまらなかったら
遺産分割協議は相続人が全員参加して、なおかつすべての相続人が賛成しなければいけません。
相続人が妻とその子どもの2人だけであれば、話し合いがこじれることもそれほど多くないと思いますが、人が3人も集まれば意見が対立することは珍しいことでなく、お金が絡めばなおさらです。
どうしても話し合いがまとまらないときは、もはや相続人だけでは遺産分割協議を成立させることができないので、そういった場合は家庭裁判所の力を借りることになります。
<ここがポイント!>
☑ 話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の力を借りる
遺産分割調停とは
相続人同士の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停は、相続人の1人もしくは複数名から相続人全員に対して申し立てをおこないます。
遺産分割調停では、裁判所が間に入って、相続人全員が納得できる分割案を模索していきます。
調停で話し合いがまとまれば調停調書が作成され、その内容にしたがって遺産が各相続人に分配されることになります。
裁判所が間に入ることで相続人同士が冷静に話し合えるようになることも珍しくありません。
<ここがポイント!>
☑ 遺産分割調停は裁判所が間に入った話し合い
どこの裁判所に申し立てるか
遺産分割調停を申し立てる裁判所は、相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所もしくは当事者が合意して決めた家庭裁判所です。
よって、相手方のうちの1人が千葉に住んでいれば、それ以外の相続人が東京に住んでいても千葉の家庭裁判所に申し立てることができます。
すべての相続人が千葉以外に住んでいても、亡くなった被相続人の最後の住所地が千葉で、相続人も千葉で調停をおこなうことに合意していれば、千葉の家庭裁判所で調停をおこなうこともできます。
<ここがポイント!>
☑ 遺産分割調停は相手の住所地または全員で合意した家庭裁判所に申し立てる
調停でも話し合いがまとまらない場合
遺産分割調停は裁判所が間に入ってくれるとはいえ、あくまでも話し合いなので、最終的には相続人全員の合意が必要です。
調停まですれば、たいていのケースでは話しがまとまりますが、どうしても納得しない相続人がいると調停は成立しません。
そういった場合、家庭裁判所としても強引に話し合いを成立させることはできないので調停は不成立となります。
調停が不成立になると、自動的に審判手続きに移行し、裁判官が全ての事情を総合的に考慮した上で審判をすることになります。
<ここがポイント!>
☑ 調停が不成立の場合は自動的に審判手続きに移行する
遺産分割調停に必要な書類
遺産分割調停の申立てに必要な実費は収入印紙と切手代です。収入印紙は被相続人(亡くなった方)1人につき1200円ですが、切手代については各裁判所によって異なります。
しかし、実際には、申立書以外にも戸籍謄本等を提出しなければいけないので、それらの取得手数料を合わせると最低でも数千円はかかります。
なお、必要な書類は事案によって多少異なりますが一般的に用意しなければいけないものは次のとおりです。
裁判所に提出する書類
☑ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
☑ 相続人全員の戸籍謄本
☑ 相続人全員の住民票
☑ 遺産に関する証明書
例)不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳または残高証明書、有価証券など
遺産分割調停と司法書士
司法書士には簡易裁判所の訴訟代理権(簡裁代理権)はありますが、家庭裁判所の訴訟代理権(家事代理権)はありません。よって、相続人の代理人として遺産分割調停に関わることはできません。
しかし、司法書士は裁判所に提出する書類を作成することができるので、遺産分割調停の申立書を作成することができます。
遺産分割調停の申立書に添付しなければいけない戸籍謄本等も職権で取得することができるので、相続人が多い場合等は、申立書の作成を司法書士にお願いすると戸籍の取り寄せまで任せられます。
<ここがポイント!>
☑ 司法書士に遺産分割調停申立書の作成と戸籍謄本の取り寄せをお願いできる
遺産分割調停申立書作成の料金
5万円~(+実費) ※税抜き
※事案により異なりますので詳しくはお問い合わせください
司法書士報酬以外にかかる実費
☑ 収入印紙、切手代
☑ 戸籍謄本等の取得費用
☑ 住民票の取得費用
☑ 不動産の登記事項証明書および評価証明書の取得費用
☑ 郵送費
当事務所に依頼した場合の流れ
来所相談
※電話、メール、ネットからご予約ください
必要書類の収集
※司法書士が戸籍謄本等を取り寄せます
申立書の作成
※司法書士が遺産分割調停の申立書を作成します
申立書への押印
※完済した遺産分割調停の申立書にお客様が押印します
家庭裁判所への申立て
※司法書士が申立書一式を裁判所へ提出します
遺産分割でよくある質問
Q5.話し合いがまとまらなかった場合はどうすればよいですか?
Q7.相続人の中に行方不明の者がいる場合はどうすればいいですか?
Q8.相続人の中に未成年者がいる場合はどうすればいいですか?
Q9.相続人の中に認知症の者がいる場合はどうすればいいですか?
Q10.相続人の中に海外に住んでいる者がいる場合はどうすればいいですか?
Q1.遺産分割協議とはなんですか?
A 相続人による話し合いで遺産の分配を決める手続です
遺言書がある場合は、亡くなった被相続人の遺産は原則的に遺言書の内容どおりに分配されます。
しかし、遺言書がなかった場合は、民法が定める法定相続分に基づき、遺産が分配されますが、法定相続分と異なる割合で遺産を分配したい場合は、遺産分割協議で自由に各相続人の取り分を決めることができます。
なお、相続人が1人であれば遺産分割協議は不要です。
Q2.遺産分割協議には誰が参加できますか?
A 相続人以外は参加できない
遺産分割協議に参加できるのは、原則的に亡くなった被相続人の相続人に限られます。よって、相続とは関係のない第三者が参加することはできません。
例えば、父Aが亡くなり、その相続人が妻B、長男C、長女Dである場合に、遺産分割協議に参加できるのは相続人である妻B、長男C、長女Dの3人だけです。
よって、長男Cの妻や長女Dの夫が代わりに参加することは認められません。
Q3.一部の相続人だけで遺産分割協議はできますか?
A 相続人全員の参加が絶対条件
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければいけません。もし、1人でも欠けていた場合は無効となります。
Q2の例でいえば、妻B、長男C、長女Dの3人全員が参加しなければ遺産分割協議は成立しないことになります。
よって、妻Bと長男Cの2人だけで話し合いをしても、法的に有効な遺産分割協議とはなりません。
Q4.話し合いがまとまった場合はどうすればよいですか?
A 遺産分割協議書を作成する
相続人全員での話し合いがまとまった場合、単なる口約束で終わらせるのでなく、きちんと書面にしておく必要があります。これを遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書は相続人自身が作成することもできますが、記載内容に問題があると、あとで各種相続財産の名義変更手続きができないことがあるので司法書士にお願いするのが安全です。
Q5.話し合いがまとまらなかった場合はどうすればよいですか?
A 家庭裁判所に調停を申し立てる
遺産分割協議は1人でも反対の者がいると成立しません。何度話し合っても、相続人全員の合意が得られない場合は、もはや相続人だけでは遺産分割協議を成立させることができません。
そういった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。調停が申し立てられると、裁判所が間に入って遺産分割の話を進めることになります。
Q6.遺産分割協議書には実印を押さなければいけませんか?
A 相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書をつける
遺産分割協議書を作成する場合、最後に相続人全員が署名押印します。また、遺産分割協議書に押す印鑑は、必ず実印でなければいけません。
よって、1人でも認印で押印していると、有効な遺産分割協議書とはいえません。さらに、実印であることを証明するために相続人全員の印鑑証明書も必要です。
なお、相続による不動産の名義変更では、印鑑証明書が3ヶ月以内のものである必要はありませんが、名義変更する財産によっては3ヶ月以内でなければいけないものもあります。
Q7.相続人の中に行方不明の者がいる場合はどうすればいいですか?
A 家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任してもらうか、失踪宣告の申し立てをする
相続人の中に行方不明の者がいる場合、行方不明から7年以上経過しているかどうかがポイントです。
失踪宣告を受けた者は、法律上は死亡したものとして扱われるため、失踪宣告の申し立てをするには行方不明から7年以上経過していることが条件です。
よって、7年以上であれば失踪宣告、7年未満であれば不在者の財産管理人を付けてもらうことになります。詳しくは各ページをご覧ください。
Q8.相続人の中に未成年者がいる場合はどうすればいいですか?
A 家庭裁判所に未成年者の特別代理人を申し立てる
通常は未成年者の親権者が法定代理人となります。
しかし、未成年者の親権者である親も相続人として遺産分割協議に参加する場合、親権者を未成年者の代理人として認めてしまうと、親が1人でなんでも決めることができてしまいます。
例えば、Q2の場合に、長男Cと長女Dが未成年であった場合は、妻Bを長男Cと長女Dの代理人として認めてしまうと、妻Bの裁量によって自由に遺産分割協議ができてしまいます。
よって、未成年者と親権者である親の利害が対立する場合は、家庭裁判所に未成年者の特別代理人選任の申立てをおこないます。
そして、特別代理人が未成年者に代わって、遺産分割協議に参加することになります。Q2の場合で、長男Cと長女Dが共に未成年である場合は、それぞれ別の特別代理人を付けなければいけません。
一般的には、未成年者の祖父母や伯父、叔母が特別代理人に選ばれることが多いです。
Q9.相続人の中に認知症の者がいる場合はどうすればいいですか?
A 家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる
相続人の中に認知症などで判断能力がない者がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、その後見人が認知症などの相続人に代わって、遺産分割協議に参加することになります。
なお、後見人を付けた場合、遺産分割協議が終わっても、認知症の被後見人が亡くなるまで後見人の業務は続きますので、それを踏まえた上で裁判所に申立てをする必要があります。
また、本人(被後見人)の子どもが、すでに本人の後見人となっており、被後見人と後見人が共同相続人であるにもかかわらず、そのまま遺産分割協議をおこなうと利益相反行為に該当します。
こういった場合は、家庭裁判所に被後見人のための特別代理人を選任してもらう必要がありますが、すでに後見監督人がいる場合は、後見監督人が被後見人を代理するので、特別代理人の選任は不要です。
Q10.相続人の中に海外に住んでいる者がいる場合はどうすればいいですか?
A 印鑑証明書の代わりに署名証明書を発行してもらう
遺産分割協議書には相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を付けなければいけませんが、海外に住んでいて日本に住民登録がないと印鑑証明書の発行を受けることができません。
そういった場合は、署名証明(サイン証明)を用意します。
具体的には、遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押し、遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割印してもらいます。
なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前でおこなうので、事前に署名した遺産分割協議書を持参しないように注意してください。