2023年(令和5年)4月施行の改正民法の内容は?

被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していなかった場合、相続人は法定相続分に従い遺産を分配するのが原則です。

しかし、遺産分割協議がまとまれば法定相続分とは全く異なる配分で遺産を分配することもできます。

たとえば、父と母とその子どもの3人家族で父が亡くなった場合、相続人は母と子どもの2人でそれぞれの法定相続分は2分の1ずつです。

しかし、特別受益寄与分を考慮した遺産分割協議が成立すれば母(もしくは子ども)が全ての財産を相続することができます。

特別受益と寄与分とは

☑ 特別受益 ➡ 一部の相続人が特別に受けていた利益(生前贈与や遺贈など)

☑ 寄与分 ➡ 遺産の維持や増加に貢献した相続人に認められる相続分の増額分

これまでは相続人が特別受益や寄与分を主張することに特に期限はなかったのですが、民法の改正によって、2023年(令和5年)4月1日から、遺産分割協議において特別受益と寄与分の主張をする場合の期限が相続開始の時から10年」と定められました。

つまり「相続開始から10年経過後は具体的相続分(特別受益や寄与分の主張)が原則できなくなった」ということです。

ただし、相続開始から10年経過前に相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をした場合は特別受益や寄与分の主張ができるので、10年以内に遺産分割が成立しそうにない場合は家庭裁判所に遺産分割請求をおこなう必要があります。

相続開始から10年経過の期間満了前6か月以内に遺産分割請求することができないやむを得ない事由があった場合は、当該事由が消滅してから6か月が経過する前に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をすれば具体的相続分の主張が可能です。

よって、遺産分割の話し合いが揉める可能性があって、寄与分や特別受益を主張して自分が有利に遺産分割協議を進めたいのであれば、相続開始から10年以内に遺産分割協議をおこなう必要があります。

この規定は改正法の施行日(令和5年4月1日)より前に被相続人が死亡した場合の遺産分割にも適用されます。

つまり、2023年(令和5年)4月1日時点において、すでに相続開始から10年が経過している場合にも改正後の新民法が適用されるということです。

しかし、この場合は施行日から5年間の猶予期間(令和10年4月1日まで)が設けられています。

その場合は以下の3パターンが考えられますが、それぞれ特別受益や寄与分の主張ができるのは以下の期日までとなります。

経過措置が適用される3つのケース

【施行日時点ですでに相続開始から10年が経過している場合】

➡ 2028年(令和10年)4月1日まで

【施行日から5年の猶予期間中に10年が経過する場合】

➡ 2028年(令和10年)4月1日まで

【5年の猶予期間経過後に相続開始から10年が経過する場合】

➡ 相続開始から10年が経過するまで

これまでは特別受益や寄与分を主張する期限が定められていなかったので、相続が発生しても早期に遺産分割がおこなわれないことが珍しくありませんでした。

しかしその間に数次相続が発生して相続財産の管理や処分が困難となり、それが所有者不明土地問題が発生する原因の一つとされてきました。

民法の改正によって、相続開始から10年以上経過した場合の遺産分割では原則的に法定相続分や指定相続分が適用されることになり、相続登記の期限や相続開始から10年経過後の遺産未分割の取り扱いが変わりました。

ただし、今回の民法改正は、あくまでも早期の遺産分割を促すことが目的であって、遺産分割の期限が10年と定められたわけでははないのでその点は誤解しないでください。

あくまでも「相続人全員の合意」があれば10年経過後であっても特別受益や寄与分を考慮して自由に遺産の配分を決めることはこれまでと同様に可能です。

ただし、10年以内に遺産分割協議がまとまらない場合は、相続開始から10年経過する前に家庭裁判所に遺産分割請求をしないと特別受益や寄与分の主張ができなくなるのでご注意ください。

よって、施行日より前に相続が開始されている場合は、猶予期間を確認したうえで期限内に裁判所に遺産分割を請求するようにしてください。

ここがポイント!

民法改正によって特別受益や寄与分の主張ができるのは相続開始から10年以内になった

遺産分割協議が成立するためには相続人が全員参加して話し合いをおこない、遺産の分配について反対する者が1人も出ることなく相続人全員で合意しなければいけません。

例えば、相続人が3人であるにもかかわらず、2人の間でだけ遺産の話し合いをしても、それでは遺産分割協議とはいえません。

また、3人全員が参加していても、賛成が2人だけで1人が反対している場合は、遺産分割協議が成立することはありません。

よって、遺産分割協議を成立させるためには必ず相続人全員が話し合いに参加して、一人も反対することなく相続人全員が賛成しなければいけません。

ここがポイント!

1人でも参加しなかったり反対すれば遺産分割協議は成立しない

特別寄与料は民法改正によって、2019年(令和元年)7月1日から導入された制度です。

被相続人が同日以前に亡くなられている場合には適用されないのでご注意ください。

これまでの寄与分は対象者が相続人に限られていたため、相続人の配偶者などが被相続人の療養看護をどれだけ献身的におこなっても相続人でないとの理由で寄与分が認められず、相続財産を取得することができませんでした。

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そのような不公平な改めるために、新たに「特別寄与料制度」が設けられました。

特別寄与料とは、被相続人を無償で介護するなどして財産の維持や増加に貢献した相続人以外の親族が、相続人に対して寄与度に応じた金銭を請求することができる権利です。

ただし、特別寄与料は親族に限られているので、内縁の夫や妻は対象外となります。

特別寄与料を請求できる条件

1.被相続人の親族であること

2.被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をしたこと

3.被相続人の財産の維持または増加について無償で特別の寄与をしたこと

1.親族であること

親族というのは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族が該当します。

兄弟姉妹(2親等の血族)、甥姪(3親等の血族)、子の配偶者(1親等の姻族)、配偶者の兄弟姉妹(2親等の姻族)等が該当します。

相続人や相続放棄、欠格によって相続人の資格を失った人は含まれません。

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これは相続人であれば通常の寄与分が認められ、相続放棄などによって相続人でなくなった者にまで寄与料を認める必要はないとの趣旨です。

ここでの親族は法律婚を前提としているので、事実婚(相続人の長男の内縁の妻など)や親族でない家政婦、ヘルパー等には特別寄与料は認められません。

2.療養看護その他の労務提供をしたこと

特別寄与料を請求できるのは以下の2つのケースです。

☑ 亡くなった人の介護をしていた ➡【療養看護型】

☑ 亡くなった人の事業に携わっていた ➡【家業従事型】

いずれの場合も実際に介護をしていたり、会社やお店で働いていた等の労務提供が必要になるので、単にお金を出しただけの場合は該当しません。

例)認知症の父を息子の妻が仕事を辞めて介護をしていた、父が営む八百屋で息子の妻が店番をしていた

被相続人の事業に出資をしただけであったり、介護費用を肩代わりしただけでは特別寄与料を請求することはできません。

あくまでも「療養看護その他の労務提供をしたこと」が特別寄与料を請求する条件となります。

3.財産の維持または増加について無償で特別の寄与をしたこと

療養看護その他の労務提供をしても、被相続人の財産の維持または増加に寄与しなかった場合は特別寄与料の請求はできません。

単に精神的な支えになっただけで、相続財産の維持や増加に貢献していない場合は特別寄与料は認められません。

これに対して、親族の献身的な介護によってヘルパーを雇わずに済んだような場合は「療養看護」や「労務の提供」と「相続財産の維持または増加」に因果関係があるので特別寄与料を請求できます。

無償であることが条件なので、対価をもらっていた場合は対象外です。

ただし、労務の対価とはいえない程度のお小遣い程度の対価をもらっていた場合は、特別寄与料が認められる可能性があります。

親族間には扶養義務や協力扶助義務がある場合もあるので、通常の寄与では足りず特別の寄与が必要とされますが、親族だからといって扶助義務等が前提とされているわけではありません。

相続人との話し合い

特別寄与料を請求する場合、まずは相続人との話し合いとなります。

相続人全員が合意すれば、本来であれば特別の寄与に該当しない場合であっても認めることは自由です。

相続人に特別の寄与を認めてもらえたら、寄与料の額を具体的に決めます。

話し合いが成立した場合は合意書を作成しておくのが安全です。

口頭での約束だけだと、あとから言った言わないの争いに発展するおそれがあるからです。

家庭裁判所に調停を申し立てる

相続人との話し合いが成立しない場合は家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」の申し立てをおこないます。

申立期限は「相続の開始および相続人を知った時から6か月または相続開始から1年」とかなり短いのでご注意ください。

調停では裁判所の調停委員が間に入って話し合いをおこないますが、それでもまとまらない場合は自動的に審判に移行します。

審判は話し合いで解決を目指す調停とは異なり、裁判官が決定を下します。

裁判所は特別の寄与を「無料労務の恩賞」ではなく「財産形成の対価」と考えるので、調停で特別寄与料が認められるハードルは低くありません。

よって、客観的な証拠が十分にない場合は裁判所での特別の寄与を認めてもらうのは難しいので、なるべく相続人との話し合いで合意できるようにした方がよいと思われます。

特別寄与料の税金

特別寄与料をもらった者は遺贈を受けたものとみなされるので相続税が課税されます。

被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人になるので、相続税の2割加算の対象になります。

特別寄与料の額が確定したことを知った日から10か月以内に相続税の申告をする必要があるのでご注意ください。

特別寄与料を支払った相続人は、その分を相続財産から控除できます。

ここがポイント!

民法の改正によって、相続人以外の者に特別寄与料の請求が認められた

無事に遺産分割の話し合いが成立したら、遺産の分配方法を記載した書面を作成し、その書面に相続人全員が記名もしくは署名したうえで実印を押さなければいけません。

こうして出来上がった書類を遺産分割協議書といい、これに相続人全員の印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書は預貯金や不動産等の各種財産の名義変更手続きで必要になるので、話し合いがまとまったら必ず作成してください。

ここがポイント!

話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成し印鑑証明書をつける

不動産の名義変更をする場合、法定相続分どおりであれば遺産分割協議書は不要です。

これに対して、遺言書がない限りは特定の相続人が不動産を単独で相続したり、各相続人が法定相続分とは異なる配分で不動産を相続するには、遺産分割協議書を作成しなければいけません。

不動産の名義変更では司法書士に相談する段階で事前に遺産分割協議書を作成していることは稀なので、司法書士が遺産分割協議書を作成したうえで相続人に署名押印してもらうことがほとんどです。

民法改正によって相続登記が義務化されたので、2024年(令和6年)4月からは原則的に3年以内に相続登記をおこなう必要があります。

3年以内に遺産分割が成立していない場合は、法定相続分どおりの相続登記(もしくは相続人申告登記)をおこなうことで義務を果たしたことになります。

その後に遺産分割が成立した場合は成立日から3年以内に遺産分割による移転登記をおこないます。

なお、遺産分割協議をする前には相続人の範囲を確定するために被相続人の出生から亡くなるまでの全ての戸籍謄本を取得して、誰が相続人になるのかを調査しなければいけません。

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亡くなった被相続人の戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本をすべて取得するのはかなり大変な作業ですが、これらの戸籍謄本なども司法書士が職権で取得することができるので、相続人調査や遺産分割協議書の作成は、まとめて司法書士にお願いするのが安全で確実です。

ここがポイント!

遺産分割協議書は自分で作成するより司法書士にお願いするのが安全確実

報酬 ※税抜き

1万円~(+実費) 

※事案により異なりますので詳しくはお問い合わせください

司法書士報酬以外にかかる実費

☑ 戸籍謄本の取得費用

☑ 印鑑証明書の取得費用

☑ 住民票の取得費用

☑ 不動産の登記事項証明書および評価証明書の取得費用

☑ 郵送費

【来所相談】
電話、メールでご予約ください
【必要書類の収集】
※当事務所が戸籍謄本などを取得して相続人を確定します
【遺産分割協議書の文案作成】
※お客様のご希望に沿った遺産分割協議書の文案を作成します
【お客様に遺産分割協議書の文案を提示】
※すべての相続人に文案の内容を確認してもらいます
【遺産分割協議書の作成】
※すべての相続人の同意が得られたら正式な遺産分割協議書を作成します
【相続人が遺産分割協議書へ署名押印】
※すべての相続人が遺産分割協議書に署名し実印を押します
【遺産分割協議書の完成】
※すべての相続人の印鑑証明書を添付します
【各種財産の名義変更手続き】
※遺産分割協議書を法務局や銀行などに提出して名義変更の手続きをしま

遺産分割協議は相続人が全員参加して、なおかつすべての相続人が賛成しなければいけません。

相続人が妻とその子どもの2人だけであれば、話し合いがこじれることもそれほど多くないと思いますが、人が3人も集まれば意見が対立することは珍しいことでなく、お金が絡めばなおさらです。

どうしても話し合いがまとまらないときは、もはや相続人だけでは遺産分割協議を成立させることができないので、相続人同士の話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

遺産分割調停は、相続人の1人もしくは複数名から相続人全員に対して申し立てをおこないます。

遺産分割調停では、裁判所が間に入って、相続人全員が納得できる分割案を模索していきます。

調停で話し合いがまとまれば調停調書が作成され、その内容にしたがって遺産が各相続人に分配されることになります。

裁判所が間に入ることで相続人同士が冷静に話し合えるようになることも珍しくありません。

遺産分割調停を申し立てる裁判所は、相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所もしくは当事者が合意して決めた家庭裁判所です。

よって、相手方のうちの1人が千葉に住んでいれば、それ以外の相続人が東京に住んでいても千葉の家庭裁判所に申し立てることができます。

すべての相続人が千葉以外に住んでいても、亡くなった被相続人の最後の住所地が千葉で、相続人も千葉で調停をおこなうことに合意していれば、千葉の家庭裁判所で調停をおこなうこともできます。

遺産分割調停は裁判所が間に入ってくれるとはいえ、あくまでも話し合いなので、最終的には相続人全員の合意が必要です。

調停まですれば、たいていのケースでは話しがまとまりますが、どうしても納得しない相続人がいると調停は成立しません。

そういった場合、家庭裁判所としても強引に話し合いを成立させることはできないので調停は不成立となります。

調停が不成立になると、自動的に審判手続きに移行し、裁判官が全ての事情を総合的に考慮した上で審判をすることになります。

遺産分割調停の費用と必要書類

遺産分割調停の申立てに必要な実費は収入印紙切手代です。

収入印紙は被相続人(亡くなった方)1人につき1200円ですが、切手代については各裁判所によって異なります。

実際には申立書以外にも戸籍謄本等を提出しなければいけないので、それらの取得手数料を合わせると最低でも数千円はかかります。

必要な書類は事案によって多少異なりますが一般的に用意しなければいけないものは次のとおりです。

裁判所に提出する書類

☑ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

☑ 相続人全員の戸籍謄本

☑ 相続人全員の住民票

☑ 遺産に関する証明書

例)不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳または残高証明書、有価証券など

司法書士には簡易裁判所の訴訟代理権(簡裁代理権)はありますが、家庭裁判所の訴訟代理権(家事代理権)はありません。

よって、相続人の代理人として遺産分割調停に関わることはできません。

しかし、司法書士は裁判所に提出する書類を作成することができるので、遺産分割調停の申立書を作成することができます。

遺産分割調停の申立書に添付しなければいけない戸籍謄本等も職権で取得することができるので、相続人が多い場合等は、申立書の作成を司法書士にお願いすると戸籍の取り寄せまで任せられます。

遺産分割調停申立書作成の料金

5万円~(+実費) ※税抜き

※事案により異なりますので詳しくはお問い合わせください

司法書士報酬以外にかかる実費

☑ 収入印紙、切手代

☑ 戸籍謄本等の取得費用

☑ 住民票の取得費用

☑ 不動産の登記事項証明書および評価証明書の取得費用

☑ 郵送費

【来所相談】
電話、メールからご予約ください
【必要書類の収集】
※当事務所が戸籍謄本等を取り寄せます
【申立書の作成】
※司法書士が遺産分割調停の申立書を作成します
【申立書への押印】
※完済した遺産分割調停の申立書にお客様が押印します
【家庭裁判所への申立て】
※司法書士が申立書一式を裁判所へ提出します

遺産分割協議に期限はありますか?

遺産分割協議自体に期限はないが、特別受益や寄与分の主張は相続開始から10年以内

遺言書がある場合は、亡くなった被相続人の遺産は原則的に遺言書の内容どおりに分配されます。

しかし、遺言書がなかった場合は、民法が定める法定相続分に基づき、遺産が分配されますが、法定相続分と異なる割合で遺産を分配したい場合は、遺産分割協議で自由に各相続人の取り分を決めることができます。

この際に特別受益や寄与分の主張をしたいのであれば、相続開始から10年以内に遺産分割を成立させる必要があります。

ただし、相続人全員の合意があれば、10年以上経過した遺産分割でも特別受益や寄与分を考慮して自由に遺産の配分を決めることができます。

遺産分割協議には誰が参加できますか?

相続人以外は参加できない

遺産分割協議に参加できるのは、原則的に亡くなった被相続人の相続人に限られます。

よって、相続とは関係のない第三者が参加することはできません。

例えば、父Aが亡くなり、その相続人が妻B、長男C、長女Dである場合に、遺産分割協議に参加できるのは相続人である妻B、長男C、長女Dの3人だけです。

よって、長男Cの妻や長女Dの夫が代わりに参加することは認められません。

一部の相続人だけで遺産分割協議はできますか?

A 相続人全員の参加が絶対条件

遺産分割協議は相続人全員が参加しなければいけません。

1人でも欠けていた場合は無効となります。

上記の例でいえば、妻B、長男C、長女Dの3人全員が参加しなければ遺産分割協議は成立しないことになります。

よって、妻Bと長男Cの2人だけで話し合いをしても、法的に有効な遺産分割協議とはなりません。

話し合いがまとまった場合はどうすればよいですか?

遺産分割協議書を作成する

相続人全員での話し合いがまとまった場合、単なる口約束で終わらせるのでなく、きちんと書面にしておく必要があります。

これを遺産分割協議書といいます。

遺産分割協議書は相続人自身が作成することもできますが、記載内容に問題があると、あとで各種相続財産の名義変更手続きができないことがあるので司法書士にお願いするのが安全です。

話し合いがまとまらなかった場合はどうすればよいですか?

家庭裁判所に調停を申し立てる

遺産分割協議は1人でも反対の者がいると成立しません。

何度話し合っても、相続人全員の合意が得られない場合は、もはや相続人だけでは遺産分割協議を成立させることができません。

そういった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

調停が申し立てられると、裁判所が間に入って遺産分割の話を進めることになります。

遺産分割協議書には実印を押さなければいけませんか?

相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書をつける

遺産分割協議書を作成する場合、最後に相続人全員が署名押印します。

遺産分割協議書に押す印鑑は必ず実印でなければいけません。

よって、1人でも認印で押印していると、有効な遺産分割協議書とはいえません。

実印であることを証明するために相続人全員の印鑑証明書も必要です。

相続による不動産の名義変更では印鑑証明書が3ヶ月以内のものである必要はありませんが、名義変更する財産によっては3ヶ月以内でなければいけないものもあります。

相続人の中に行方不明の者がいる場合はどうすればいいですか?

家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任してもらうか、失踪宣告の申し立てをする

相続人の中に行方不明の者がいる場合、行方不明から7年以上経過しているかどうかがポイントです。

失踪宣告を受けた者は法律上は死亡したものとして扱われるため、失踪宣告の申し立てをするには行方不明から7年以上経過していることが条件です。

よって、7年以上であれば失踪宣告、7年未満であれば不在者の財産管理人を付けてもらうことになります。

相続人の中に未成年者がいる場合はどうすればいいですか?

家庭裁判所に未成年者の特別代理人を申し立てる

通常は未成年者の親権者が法定代理人となります。

しかし、未成年者の親権者である親も相続人として遺産分割協議に参加する場合、親権者を未成年者の代理人として認めてしまうと、親が1人でなんでも決めることができてしまいます。

例えば、父Aが亡くなり、その相続人が妻B、長男C、長女Dである場合に、長男Cと長女Dが未成年であった場合は、妻Bを長男Cと長女Dの代理人として認めてしまうと、妻Bの裁量によって自由に遺産分割協議ができてしまいます。

よって、未成年者と親権者である親の利害が対立する場合は、家庭裁判所に未成年者の特別代理人選任の申立てをおこないます。

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そして、特別代理人が未成年者に代わって、遺産分割協議に参加することになります。

長男Cと長女Dが共に未成年である場合は、それぞれ別の特別代理人を付けなければいけません。

一般的には未成年者の祖父母や伯父、叔母が特別代理人に選ばれることが多いです。

相続人の中に認知症の者がいる場合はどうすればいいですか?

家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる

相続人の中に認知症などで判断能力がない者がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、後見人が認知症などの相続人に代わって、遺産分割協議に参加することになります。

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後見人を付けた場合、遺産分割協議が終わっても認知症の被後見人が亡くなるまで後見人の業務は続くので、それを踏まえた上で裁判所に申立てをする必要があります。

本人(被後見人)の子どもが、すでに本人の後見人となっており、被後見人と後見人が共同相続人であるにもかかわらず、そのまま遺産分割協議をおこなうと利益相反行為に該当します。

こういった場合は、家庭裁判所に被後見人のための特別代理人を選任してもらう必要がありますが、すでに後見監督人がいる場合は、後見監督人が被後見人を代理するので特別代理人の選任は不要です。

相続人の中に海外に住んでいる者がいる場合はどうすればいいですか?

印鑑証明書の代わりに署名証明書を発行してもらう

遺産分割協議書には相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を付けなければいけませんが、海外に住んでいて日本に住民登録がないと印鑑証明書の発行を受けることができません。

そういった場合は、署名証明(サイン証明)を用意します。

具体的には、遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押し、遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割印してもらいます。

遺産分割協議書への署名は領事の面前でおこなうので、事前に署名した遺産分割協議書を持参しないように注意してください。

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