遺贈の放棄

遺贈とは

遺贈というのは、遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与することです。一般的には、相続人以外の第三者に財産を贈与する場合が多いですが、相続人に対して遺贈することもできます。

また、遺贈には大きく分けて包括遺贈特定遺贈の2つがあります。包括遺贈というのは、「Aに全財産を贈与する」とか、「Bに遺産の2分の1を与える」というように、遺言者の全ての遺産もしくは一定の割合を示してする遺贈です。なお、包括遺贈を受ける人を包括受遺者といいます。

これに対して、特定遺贈は、「Cに千葉市稲毛区〇〇の土地を遺贈する」、「Dに千葉銀行稲毛東口支店の普通預金を遺贈する」というように特定の財産を指定して遺贈します。なお、特定遺贈を受ける人を特定受遺者といいます。

<ここがポイント!>
☑ 遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類がある

包括受遺者の権利義務

包括遺贈を受ける包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します。そのため、遺言者の相続財産に借金などが含まれている場合は、それらのマイナスの遺産も引き継ぐことになります。

なお、不動産や預貯金などのプラスの財産だけを引き継ぎ、借金などのマイナスの財産を引き継がないということはできません。

遺言者が包括遺贈をする場合、遺言書を作成した時点では、マイナスの財産は存在しないか、あってもプラスの財産よりも少ないのが普通です。

しかし、遺言書の作成から遺言者が死亡するまでの間に財産状況に大きな変化があり、借金などのマイナスの財産が不動産や預貯金等のプラスの財産を上回る可能性もゼロではありません。

そういった場合、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するので、包括遺贈を受けた割合に応じて、マイナスの財産も承継することになります。

そのため、包括受遺者は相続人の場合と同様に、相続の放棄・承認についての規定が適用されています。

その結果、包括受遺者が遺贈の放棄をする場合は、自己のために包括遺贈があったことを知ったとき(自分が包括受遺者であることを知ったとき)から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して、包括遺贈放棄の申し立てをする必要があります。

包括遺贈を放棄すると、相続放棄の場合と同様、包括受遺者としての一切の権利義務を放棄することになるので、借金などのマイナスの財産を引き継がなくてもよくなりますが、預貯金や不動産などのプラスの財産を受け取る権利もなくなります。

<ここがポイント!>
☑ 包括受遺者には、相続人と同様の放棄・承認の規定が適用される
☑ 包括遺贈放棄の期限は、自己のために包括遺贈があったことを知ったときから3ヶ月以内

特定遺贈の放棄

特定受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます。また、特定遺贈の放棄は、包括遺贈の放棄と異なり、家庭裁判所に申し立てをする必要がありません。

そのため、特定受遺者は、遺贈義務者に対して、遺贈を放棄すると意思表示するだけで済みます。

なお、遺言執行者がいるときは、遺言執行者が遺贈義務者となりますが、遺贈放棄の意思表示は、内容証明郵便によっておこうのが一般的です。

また、特定遺贈の放棄に時間制限はないので、遺言の効力が発生してから何年たっても放棄または承認の意思表示ができます。

ただし、遺贈義務者やその他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができます。

この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます。

<ここがポイント!>
☑ 特定受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄できる
☑ 特定遺贈の放棄は、包括遺贈の放棄と異なり、家庭裁判所への申立てが不要

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