相続放棄と相続分の譲渡の違い

相続分の譲渡とは

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされ、その結果、不動産や預貯金などのプラスの財産のみならず、借金などのマイナスの財産も承継しなくてよくなります。

よって、被相続人がプラスの財産を上回るほどの多額の借金を残したまま死亡したような場合には、家庭裁判所に相続放棄の申立てをするのが一般的です。

これに対して、相続分の譲渡というのは、各共同相続人が遺産全体の上に持つ包括的持分または相続人の地位を譲渡することをいいます。

相続分の譲渡を受けた者は、たとえ相続と無関係の第三者であっても、譲渡を受けた相続分を持つ相続人として、相続財産を共有し、遺産分割協議に参加することができるようになります。

その結果、相続分の譲渡を受けた者を除外した遺産分割協議は無効となります。

ただし、相続分の譲渡をしても借金などの債務については、対外的にその支払い義務から逃れることはできません。

つまり、相続分の譲渡人が相続債権者から請求を受けた場合は、依然として債務の支払義務があるわけです。

よって、相続人が被相続人の債務の支払い義務から完全に逃れるためには、相続開始後3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをする必要があります。

<ここがポイント!>
☑ 相続分の譲渡とは相続人の地位を第三者に譲渡することである
☑ 債務の譲渡については、債権者に対して主張できない

最高裁平成13年7月10日判決

共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。このように、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、持分割合の数値が異なるだけで、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。そして、遺産分割がされるまでの間は、共同相続人がそれぞれの持分割合により相続財産を共有することになるところ、上記相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。

東京高裁昭和28年9月4日決定

相続分の譲渡は、これによって共同相続人の一人として有する一切の権利義務が包括的に譲受人に移り、同時に、譲受人は遺産の分割に関与することができるのみならず、必ず関与させられなければならない地位を得るのである。

大阪高裁昭和54年7月6日決定

遺産分割の審判前に相続分の譲渡がなされた場合、譲渡人が共同相続人の1人として有する一切の権利義務は包括的に譲受人に移転され、それによって譲渡人は遺産分割手続の当事者適格を失うとともに、譲受人は遺産分割に必ず関与させられなければならぬ地位を取得する。

相続分を譲渡する方法

相続分の譲渡は、遺産分割の前に行なわなければなりません。よって、すでに遺産分割協議が成立している場合は、もはや相続分の譲渡はできません。

もし、遺産分割前であれば相続分を譲渡するかどうかは当該相続人の自由なので、他の共同相続人の同意は必要ありません。

また、譲渡の相手方は他の共同相続人に限られず、共同相続人以外の第三者でも構いません。また、相続分の譲渡は有償、無償のどちらでも構いません。

なお、相続分を譲渡する際の具体的な方法については特に決まりがないので、口頭でも書面でもかまいませんが、後日の紛争を避けるために、相続分譲渡証明書を作成するのが一般的です。

なお、相続を原因とする不動産の名義変更(相続登記)をする場合は、必ず相続分譲渡証明書が必要になります。相続分の譲渡をおこなった際は、その旨の通知を共同相続人全員にしておきます。

その際は、きちんと証拠を残しておく意味でも配達証明付き内容証明郵便で通知しておくのが確実です。

なお、相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合は、他の共同相続人は通知を受けてから1ヶ月以内に相続分の価額と対価を現実に支払うことで、譲受人の承諾がなくても相続分を取り戻すことができます。

<ここがポイント!>
☑ 相続分を譲渡した際は相続分譲渡証明書を作成する
☑ 相続分を譲渡した際は内容証明郵便で他の相続人に通知する

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