任意売却の流れや費用、住宅ローンが返せなくった場合の対処法

「任意売却」という言葉を初めて聞いたという方もいると思いますが、任意売却はその名のとおり、「任意」に「売却」することです。

では、なにを任意に売却するのか?

それは不動産です。

ここでいう不動産にはいろいろな種類がありますが、一般的には住宅ローンが付いたマンションや一戸建てのマイホームであることが多いです。

では、なぜ「任意」という言葉が付いているのでしょうか?

それは、任意売却が競売と対極している手続だからです。

競売は、ご存じのとおり裁判所でおこなわれます。

そのため、競売になると自分の意志とは関係なく手続が進んでしまいます。

いわば、競売というのは裁判所による強制的な手続といえます。

反面、任意売却というのは所有者の自由な意思に基づいておこなわれます。

自由な意思に基づいた手続なので、任意売却をしたくないという方が、第三者に任意売却を強制されることはありません。

このように、競売は強制的な手続ですが、任意売却はあくまでも所有者の自由な意思に基づいた手続なので「任意」という言葉がついているわけです。

そして、任意売却で重要なのが、住宅ローンなどの担保を付けている債権者(これを「担保権者」といいます)の存在です。

なぜなら、任意売却では「担保権者全員の同意」が必要になるからです。

担保権者の同意というのは不動産に設定されている担保を抹消することの同意です。

なぜ、そのような同意が必要になるのかですが、任意売却で設定された売却金額では、全ての担保権者に返済しきれないからです。

それでも、任意売却の手続きにおいては、不動産に付いている担保はすべて消さなくてはいけません。

なぜなら、担保がついたままの不動産など誰も買わないからです。

そこで、任意売却では仲介業者が担保権者と交渉して、担保を抹消することの同意を取り付ける必要があるわけです(1人でも同意しない担保権者がいれば、任意売却は成立しません)。

ここがポイント!

任意売却とは、所有者に依頼された仲介業者が、担保権者全員の同意を得て不動産を売却する手続

マイホームを手放すしかないのであれば、わざわざ任意売却などという面倒な手続をしなくても別に競売でもいいと思うかもしれません。

しかし、住宅ローンを払わないまま放置しておくと、最終的には裁判所で競売が始まります。

競売手続は所有者が反対しても粛々と進むので、仮に、引っ越し先が決まっていなくても、買い手が見つかれば強制的に退去させられてしまいます。

この点、任意売却であれば引越時期を調整できるといった競売にはないメリットがあります。

なにより任意売却の最大のメリットは、競売よりも高値で売れるという点です。

高く売れれば、それだけ住宅ローンを減らすことができるので、競売よりも売却後の返済計画が立てやすくなります。

自己破産では、任意売却後に残った住宅ローンを含めて免責されるので、任意売却で高く売ろうが、競売で安く売れようが関係ないように思えます。

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しかし、任意売却では引っ越し費用を確保できる場合があります。

当然のことながら、競売では引っ越し費用は全く考慮されないので、自己破産であっても任意売却をするメリットはあるわけです。

これ以外にも任意売却には競売にないメリットが多数あるので、今後は自己破産をするケースであっても積極的に任意売却を選択するべきだと考えます。

ここがポイント!

任意売却は競売よりも高値で売れて、引っ越し費用がもらえる

平成21年の「中小企業金融円滑化法(通称:モラトリアム法)」の制定により、個人の住宅ローンであっても、銀行は返済計画の見直しに応じてくれやすくなりました。

モラトリアム法は約2年間の時限立法でしたが、利用者が多かったために、最終的に平成25年3月まで延長されました。

金融庁は、期限切れ後も金融機関に同様の対応を求めていますが、実際には自宅が差押えされる件数は増えているようです。

銀行に相談しても返済計画の見直しができなかったり、住宅ローン以外にサラ金やカード会社から多額の借入れがある場合は、速やかに司法書士などの専門家に相談するべきです。

司法書士に相談をすれば、債務整理をしなければいけない状態なのか判断できます。

たとえば、住宅ローン以外に高金利の貸金業者からの借入れがあれば、利息制限法による引直計算をすることで、大幅に借金を圧縮し、残った借金を分割返済したり(これを任意整理といいます)、場合によっては多額の過払い金を回収できる場合があります。

多額の過払い金を回収できれば、住宅ローン以外の借金を減らすことで生活再建できるかもしれませんし、回収額によっては住宅ローン以外の借金を一括返済できることもあります。

過払い金の消滅時効は完済してから10年なので、住宅ローンを借入れる際にそれまでの借金を完済しているような場合は、今からでも過払い金を回収できる可能性があります。

低金利の借入れが多いために、大幅な借金の減額が見込めない場合でも、裁判所に個人再生の申し立てをすることでマイホームを手放さずに、それ以外の借金を整理することができます。

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借金の解決手段はいくつもあるので、住宅ローンが払えなくなったからといって、誰にも相談せずに滞納を続けるというのは避けるべきです。

なぜならば、住宅ローンの滞納をそのまま放置しておくと、いずれ裁判所による競売手続が進み、最終的には強制退去させられてしまうからです。

そうならないためには、まずは司法書士に相談した上で、過払い金請求や任意整理で借金を整理することができるのか検討してもらいます。

もし、無理な場合には次のステップである個人再生で自宅を守れるのかどうかを検討します。

個人再生も無理で、どうしてもマイホームを手放さざるを得ないという結論になれば、そこでようやく任意売却も選択肢の一つになります。

よって、住宅ローンを払うために新たにサラ金などから借入れをして借金を増やしたり、住宅ローンの滞納を続けたまま放置したりせずに、早い段階でご相談ください。

ここがポイント!

住宅ローンが返せなくなったら、借金を重ねる前に司法書士に相談する

任意売却をしたいといっても、無条件にできるわけではありません。

そこで、どのような場合に任意売却をすることができるのかを知っておく必要があります。

①保証会社による代位弁済

銀行の住宅ローンには、必ず保証会社がついていて、住宅ローンを6ヵ月程度滞納すると、最終的には保証会社が債務者に代わって住宅ローンを一括弁済します(これを「代位弁済」といいます)。

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そのため、代位弁済する前の段階で、銀行に任意売却をしたいといっても、銀行にしてみれば保証会社が一括で支払ってくれるので、話し合いに応じてくれません。

つまり、任意売却の話を持ちかけるのは代位弁済後の保証会社もしくはサービサー(保証会社が委託した債権回収会社)ということになります。

ただし、仲介業者に任意売却の相談をするのは、保証会社による代位弁済前でも問題ありません。

②所有者の同意とやる気

当たり前ですが、所有者が「売ってもいいよ」と言わない限り、任意売却できません。

所有者の協力(やる気)も必要です。

そのため「売ってもいいけど、協力はしない」というスタンスでは任意売却を進めることはできません。

③担保権者全員の同意

担保権者とはその不動産に住宅ローンなどの抵当権をつけている債権者のことです。

担保がついていないサラ金やカード会社のような一般債権者は関係ありません。

ここでいう同意とは「担保を抹消してもいいよ」という同意です。

同意がないと不動産を売却しても、担保が付いたままです。

担保がついたままの不動産など誰も買いませんので、任意売却には担保権者全員の同意が必要なわけです。

④妥当な売却価格

任意売却では、その売却価格が市場価格と比べて妥当でなければいけません。

この点、担保権者全員の同意があれば不当に低い価格でもよさそうですが、それではいけません。

なぜダメなのでしょうか?

例えば、住宅ローンに連帯保証人がついていたとします。

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連帯保証人は任意売却後に残った住宅ローンの支払義務を負い続けます。

つまり、連帯保証人にとっては、不当に低い価格で売却されてしまうと、それだけ売却後の支払いが重荷になるわけです。

こういった場合、連帯保証人から「そもそもこの不動産は価値があるから保証をしたのに、こんな安い値段で売るなんて納得できないから、本来の値段と今回の低い値段の差額分については保証しない」と言われる可能性があります。

こういった保証人のクレームが法的に認められる場合もあるので、任意売却の価格は妥当である必要があります。

任意売却がすでに競売手続に入っている場合でも可能です。

競売が開始されると裁判所で物件情報が公開されて入札期間が決まります。

物件を買いたい人はこの期間に入札し、最も高い値段をつけた人が落札します。

任意売却は競売手続と並行して進めることもできますが、無制限ではなくリミットは開札日の前日までとなります。

開札日になれば落札者が決まってしまうので、開札日以降は任意売却ができなくなります。

開札日の前日までに話がまとまれば、債権者に競売を取り下げてもらうことで任意売却をすることができます。

競売手続が開始された後でも、任意売却を同時に進めることは可能なので、裁判所から競売開始決定の通知が届いても諦めてはいけません。

現実には、競売の通知が届いた後に、あわてて仲介業者に任意売却の相談を持ちかけるケースも多いようです。

ここがポイント!

任意売却は競売手続中でも開札日の前日までは可能

任意売却の手続自体は一般的に3~6ヵ月程度で終了することが多いようです。

ここでは、任意売却の全体像をつかむために、一連の流れをみてみましょう。

①住宅ローンの延滞
住宅ローンを6ヵ月程度滞納すると保証会社が債務者に代わって、滞納している住宅ローンを銀行に一括弁済します(これを「代位弁済」といいます)。

これによって、債権者の地位が代位弁済をした保証会社に移ります。

任意売却の交渉は、この代位弁済後の保証会社やサービサー(保証会社が委託した債権回収会社)との間でおこなわれます。
②不動産業者との仲介代理契約
特定の不動産業者と専属専任媒介契約を締結します(契約期間は3ヵ月以内で更新可能)。

これにより、他の不動産業者に依頼したり、所有者が自分で買主を見つけたりできなくなります。

任意売却の交渉窓口を一本化して欲しいという債権者側のニーズによるものです。
③不動産の査定
仲介業者が現地を調査して売却価格を査定します。

基本的には債権者が納得した上で確実に売れる価格になるので、住宅ローンの残債務は考慮されません。
④債権者との配分交渉
不動産に担保をつけている債権者(これを担保権者といいます)といくらであれば担保を抹消してくれるか交渉します。

実際に交渉するのは仲介業者なので、所有者が債権者と直接交渉するわけではありません。
⑤購入希望者探し
債権者と合意ができたら不動産を売り出します。

一般の物件と同じようにチラシインターネットで広告を出します。

これもすべて仲介業者がおこなってくれます。
⑥売買契約
買い手が見つかれば売主と買主、双方の不動産業者が立ちあって売買契約書を取り交わします。
⑦決済
売買契約からおよそ1ヵ月後、銀行に債権者や司法書士などが一堂に集まり、売買代金の決済をして、買主名義へ所有権移転登記をおこないます。

以上で、任意売却の手続自体は終わりですが、任意売却をしても返済しきれなかったローンの支払義務は残るので、任意売却をしたからといってすべて終わりではなく、売却後のローンをどのように返済していくのかを債権者と話し合う必要があります。

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自分で債権者と話し合っても話がまとまらないような場合は、そのまま放置しておくと給料等の差押えをされる可能性があります。

よって、住宅ローン以外にも借金があるのであれば、すみやかに司法書士に相談ください。

ここがポイント!

任意売却後の借金整理は司法書士に相談して方針を決める

任意売却をすることによってどのくらいの費用がかかるのかは非常に気になるところですが、仲介業者の報酬も含めた諸々の費用はすべて売却代金の中からの支払いとなるので手出しは一切ありません。

任意売却ができなかった場合、仲介業者に支払う報酬が気になりますが、売れなかった場合は報酬を請求しない仲介業者がほとんどなので、任意売却は完全成功報酬と考えていいと思います。

とはいえ、中には売れなかった場合でも法外な報酬を請求する悪質な業者もいるので十分に注意して下さい。

以下に、売却代金の中から控除することが認められている主な諸費用を挙げておきます。

任意売却の諸費用

①不動産仲介手数料

物件価格の約3%で、これが仲介業者の報酬になります。

②登記費用

不動産についている抵当権を抹消する登記の司法書士報酬登録免許税です。

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③不動産鑑定費用

不動産鑑定士による鑑定は必ずしもおこなわれるわけではありません。

④破産財団組入金

自己破産の手続き中である場合、物件価格の約3%が破産財団に組み入れられて、抵当権などの担保をつけていない一般債権者の配当に回されることがあります。

⑤延滞している固定資産税

住宅ローンが滞っている場合は固定資産税も滞納していることがあります

⑥滞納しているマンションの管理費

マンションの場合、管理費修繕費が毎月かかりますが、これも諸費用の対象になります。

⑦引っ越し費用

必ず認められるというわけではありませんが、交渉次第で20~30万円を引っ越し費用として確保できる場合が多いようです。

ここがポイント!

任意売却は成功報酬制なので、手出しは一切ないのが普通

任意売却にはメリットがいくつもありますが、デメリットもあります。

そこで、任意売却を検討されている方は、事前にメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。

メリット

①一般的に競売よりも高値で売れる

高く売れれば、それだけ住宅ローンを減らすことができます。

一般的に競売では通常の価格より2~3割は低い金額になります。

②売却後の残債務について返済計画を立てやすい

競売に比べて債権者の印象もよいので無理のない返済計画を立てられる可能性が高くなります。

③競売よりも早く終わる

競売手続は早くても6~7ヵ月、物件によっては2~3年かかることもあります。

④引っ越し費用を確保できる可能性がある

引っ越し代や生活立て直しの費用として、20~30万円を確保できる場合が多いようです。

⑤引っ越し時期を調整できる

任意売却では引越時期も考慮してもらえますが、競売だと引っ越し先が決まっていなくても、買い手が見つかれば強制退去を求められることもあります。

⑥近所に知られない

任意売却は外見上通常の売買手続と変わらないので、近所に知られることはありません。

これに対して競売だと裁判所で物件情報が公開され、インターネットや新聞にも競売物件として載ることがあるので、ご近所に知られる可能性があります。

デメリット

①信用情報がいわゆるブラックになる

競売でもブラックになりますので、任意売却特有のデメリットというわけではありません。

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②競売に比べて手間がかかる

競売手続は裁判所主導で進むため、所有者は何もする必要がありません。

これに対して、任意売却では、自分で仲介業者を探したり、売主として不動産の売却手続に関与する必要があります。

③悪質な仲介業者に騙される可能性がある

最近では任意売却専門の仲介業者も多く、その多くは良心的な会社ですが、中には悪質な業者もいるので注意が必要です。

ここがポイント!

任意売却のメリット・デメリットを検討した上で利用するかどうかを決める

金銭面

任意売却】 ➡ 市場価格と同程度で売却できる

【競  売】 ➡ 市場価格の7~8割で売却になることが多い

解説

任意売却が市場価格と同程度の金額なのに対して、競売では一般的に市場価格の7~8割で落札されることが多いので、それだけ売却後の住宅ローンが残ってしまうことになります。

引越面

任意売却】 ➡ 引っ越しをする時期を自由に決められ、引っ越し費用を確保できる場合もある

競  売】 ➡ 買い手が見つかれば、引っ越し先が決まっていなくても強制退去させられる

解説

任意売却では売却手続の一環として、引越時期も調整してもらえます。

売却費用の中から30万円前後の引っ越し費用を確保してもらえる場合もあります。

競売手続では債務者の引越などは一切考慮されず、淡々と裁判所で手続が進むだけなので、お金がなくて引っ越し先が決まっていなくても、買い手が見つかってしまえば、最終的には強制的に退去させられてしまいます。

しかし、場合によっては、早く退去して欲しいなどの理由で落札者が引っ越し費用を出してくれるケースもあるようです。

精神面

任意売却】 ➡ 周りに知られることなく売却できるので精神的負担が少ない

競  売】 ➡ 裁判所やインターネットに物件情報が掲示されたり、不動産業者が訪ねてくることがあるので、ご近所に知られる可能性がある

解説

任意売却は外見上一般的な売買と変わらないので、周りは住宅ローンが払えなくなったから家を売っているとは気づきません。

売主としてきちんと売買手続きに関与して家を手放し、新天地に引っ越すということになるので、家を追い出されるような感覚の競売とは精神的な負担が違います。

反面、競売では自分の家の情報が裁判所やインターネットに掲載され、新聞やチラシに載ることがあります。

不動産業者が訪問してきて、外観の写真を取ったり、場合によっては近所に家族構成などの聞き込みをすることもあるので、ご近所に知られる可能性があります。

債権者

任意売却】 ➡ 残った住宅ローンの返済について柔軟に対応してもらえる場合が多い

競  売】 ➡ 任意売却よりも印象が悪いので、その後の返済についても対応が厳しい

解説

任意売却であればそれまでも仲介業者が債権者と交渉をしてきたので、売却後の残債務についても柔軟に対応してもらえることが多いです。

反面、競売ではそれまで債権者と一切交渉をしていなかったので、いざ売却後の返済について債権者に相談しても、任意売却と比べて印象が悪いので、残債務の交渉もうまくいかないことが多いです。

競売は任意売却に比べてまったくいいところがないように思えますが、一つ良い点を挙げるとすれば、競売の方が長く家に居られるということでしょう。

競売手続の標準期間は6~7ヵ月程度で、最終的な立ち退きまでは競売手続が正式に始まってから10ヵ月前後かかります。

そのため、この期間を利用してなるべくお金を貯めて、新生活の準備をしたいという方も中にはいると思いますが、そういうお考えの方であっても、競売のデメリットを知った上で、任意売却もしくは競売のどちらにするのか選択してもらいたいと思います。

【任意売却と競売の違い一覧表

任意売却競売
売却価格高い低い
売却期間短い長い
引っ越し費用×
退去時期×(強制退去)
プライバシー×
残った住宅ローンの返済計画△(×)

住宅ローンを滞納し、そのまま放置しておくと、およそ6ヵ月程度で保証会社が代位弁済をします。

これにより、債権者が当初の銀行などから保証会社に代わります。その後も放置しておくと、いずれ保証会社が裁判所に競売の申立てをします。

裁判所で競売の手続が正式に開始されると、調査官が自宅に訪問してきて、家の状態などを調査します(家の中の写真も取られますが、これは精神的にかなり苦痛です)。

その後、入札が開始されて一番高値をつけた者が落札します。

落札者が予定どおり代金を支払えば、所有権が移転するので、自宅を引き渡ししなければいけません。

数年前であれば、競売手続自体に1年近くかかっていましたが、最近では裁判所もスピードアップを図っているため6~7ヵ月程度で終わることが多いようです。

しかし、買い手がつかない場合は数年かかることもあります。

競売の申立て
抵当権者が裁判所に競売の申立てをします。

これにより裁判所から「競売開始決定」という通知が届きます。
現況調査
裁判所の調査官が自宅に来て、写真も取られます。
裁判所での情報公開
一般の人でも裁判所やインターネットで物件情報を確認できます。
期間入札の開始
裁判所から「期間入札の通知」が届きます。
開札
一番高値をつけた人が落札します。
売却許可決定
特に問題がなければ、裁判所が落札者に売却することを決定します。
物件の引き渡し
任意に引き渡しをしない場合、強制的に退去させられます。

開札されて落札者が決まってしまうと任意売却はできませんが、開札日の前日までであれば任意売却ができます。

よくあるのは、裁判所から競売開始決定通知が自宅に届き、それを見た債務者が慌てて仲介業者に相談を持ちかけるというケースです。

こういったケースでも、競売開始決定から開札日までは6ヵ月程度あるので、十分に任意売却は可能です。

価格設定さえ間違わなければ、たいていの物件は半年もあれば買い手がつきますが、開札日が近づいた段階で任意売却をしようとしても、仲介業者が担保権者と交渉する時間が短いので、任意売却が成功する可能性が低くなります。

あとは、開札日までに住宅ローンなどの担保をつけているすべての債権者(これを「担保権者」といいます)の同意が得られれば、競売を取り下げて任意売却することができるわけです。

ここがポイント!

任意売却のタイムリミットは開札日の前日まで

住宅ローン以外にも、借金がある場合(もしくは過去にあった場合)は、マイホームを手放すとことを前提にした任意売却を検討する前に、債務整理をおこなうことでマイホームを守れるのかどうかを検討しなければいけません。

①過払い金請求

高金利の貸金業者から過去に借入れをしていた場合、過払い金の消滅時効は完済日から10年なので、今からでも過払い金を回収できる可能性があります。

多額の過払い金を回収できれば、住宅ローンの延滞を解消したり、住宅ローン以外の借金を完済できることもあるので、まずは過払い金があるかどうかを調べる必要があります。

ただし、過払い金が発生していても、貸金業者の対応は極めて不誠実であり、裁判をしなければ全額回収できない場合がほとんどで、最近では裁判をしてもすぐに返金に応じない業者が多いので、過払い請求は司法書士に依頼した方がよいでしょう。

②任意整理

住宅ローン以外の借金を減らすことで再建できる見込みがあれば、まずは任意整理を検討します。

任意整理とは、金利が高いものを利息制限法で引き直し計算し、残った借金を無利息で分割返済していく手続です。

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引直計算をすることで借金がすべてなくなり、逆に過払いになっていれば、そのまま過払い請求に移行します。

もともと金利が低い場合は、引直計算の対象にはなりませんので、借金の額自体は変わりませんが、将来利息のカットや毎月の返済金額を減らすことができるので、任意整理をするメリットは十分にあります。

③個人再生

住宅ローン以外の借金が大きくて、任意整理では再建できる見込みがない場合は、個人再生でマイホームを守れるか検討します。

個人再生は、裁判所に申し立てることで、マイホームを保有したまま住宅ローン以外の借金を大幅にカットする手続です。

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たとえば、住宅ローン以外の借金が500万円以下の場合は、原則的に100万円にカットされ、この100万円を3年で返済することになるので、住宅ローン以外の返済を毎月約3万円にできます。

つまり、住宅ローンの返済以外に毎月3万円の返済をすることができる見込みがあれば、任意売却ではなく個人再生を選択することでマイホームを守ることができます。

ただし、個人再生は、今後も返済をしていくことを前提にした手続なので、無条件に利用できるわけではなく、継続して安定した収入があることが大前提です。

よって、無職であったり、手取収入が少ないために生活するので精一杯であるような場合は利用することはできませんし、住宅ローン以外の担保がついている場合もNGです。

個人再生を利用する場合、これ以外にもチェックしなければいけない項目がたくさんあるので、個人再生でマイホームを守りたいという場合はお気軽に相談ください。

④自己破産

任意整理や個人再生を利用できる見込みがなければ、最終的にはマイホームも諦めて、自己破産をすることになります。

自己破産をすればマイホームは失いますが、住宅ローンを含めた全ての借金の支払義務がなくなります(ただし、税金関係の支払義務は残ります)。

売却後の住宅ローンも免責されるので自己破産を選択するケースであれば、わざわざ任意売却をしなくてもいいように思えます。

しかし任意売却には競売よりも高値で売れるという他にも、引っ越し費用を確保できる場合があったり、近所に知られずに売却できるので精神的な負担が少ないといった、競売にはない数々のメリットがあります。

よって、自己破産をすれば住宅ローンがすべてなくなるので、わざわざ任意売却しても意味がないということではありません。

競売にはないメリットや破産後の債務者の生活再建を考えれば、自己破産であっても積極的に任意売却を選択していくべきと考えます。

ここがポイント!

自己破産をするにしても任意売却を選択するメリットはある

司法書士などの法律家は借金問題のプロですから、住宅ローンが払えなくなったといった相談を受けた場合、まずはマイホームを守ることを最優先に考えます。

そのため、我々司法書士にとって「マイホームを手放すことを前提にした任意売却は最も優先順位の低い手続」であるといえます。

また、法律家の中には任意売却を正しく理解していないために、積極的でない方がいるのも事実です。

当職も昔はその一人でしたが、あらためて勉強することで任意売却には非常に有効な一面があるということを知りました。

よって、あらゆる可能性を考慮しても、マイホームを手放さざるを得ないというケースにおいては、任意売却は競売よりも優れた点が多いので、これからは法律家も積極的に任意売却を選択していくべきだと思います。

近年では、任意売却を専門にしている不動産業者も多く見受けられます。

その多くは良心的で、実際に相談を受けている相談員の方々は任意売却の手続に精通しているだけでなく、債務整理の知識もそれなりにあると思います。

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しかし、債務整理というのは実務をこなしてみないとわからないことが多く、まさに経験がものをいうため、任意売却をすべきかどうかを判断する局面においては、司法書士などの法律家が関与すべきであると考えます。

なぜならば、任意売却をしないで済むケースであるにもかかわらず、司法書士などが関与しないまま不動産業者の判断だけで任意売却をしてしまえば、それこそ取り返しがつかないからです。

そのためには、司法書士などの法律家がマイホームを手放さずに済むのかどうかの判断を担当し、どうしても手放さざるを得ないという結論に達すれば、仲介業者にバトンタッチして任意売却の手続を進めたり、自己破産と同時進行で任意売却を進める、といった形が望ましいと思います。

しかし、不動産業者に司法書士が常駐しているわけではありませんし、不動産業者に寄せられる相談が多ければ多いほど、そのすべてを不動産業者と提携している司法書士などが担当するのは現実的に難しいのも事実です。

とはいえ、任意売却が避けられない状態であるかどうかの判断を、不動産業者のみでおこなうのではなく、少なくとも相談者から聞き取りした情報を司法書士に伝えるなどして、法律家の意見を聞く必要があるのではないかと思います。

ここがポイント!

任意売却するかどうかの判断には司法書士等の法律が関与すべき

任意売却とはなんですか?

任意売却とは、住宅ローンが支払えなくなった場合に、不動産業者に仲介してもらって、担保をつけている債権者(これを「担保権者」といいます)と話をつけてもらい、売却手続と同時に不動産についている全ての担保を抹消する手続をいいます。

任意売却をすれば住宅ローンがすべてなくなるのですか?

任意売却をすれば、不動産についていた抵当権等の担保が消えますが、不動産の売却代金で払い切れなかった住宅ローンの返済は残ります。

よって、任意売却をしたからといっても、住宅ローンなどの借金がすべてなくなるわけではないということになります。

任意売却をしたいけど、本当にうまくいくのですか?

任意売却が成功するには、住宅ローンなどの抵当権をつけている担保権者全員の同意が必要になります。

よって、担保権者の1人でも同意しない場合は任意売却をすることができません。

そういった意味でも、任意売却は仲介業者の力量によって成功が左右される手続といえます。

任意売却をすれば、必ず引っ越し費用が確保できるのですか?

任意売却では、20~30万円の引っ越し費用を確保できることが多いようですが、その場合でも引っ越し費用をまるまるもらえるわけではありません。

場合によっては引っ越し費用を確保できないこともあります。

任意売却が終わるまでどのくらい時間がかかりますか?

任意売却の期間はケースバイケースなので、すぐに買い手が見つかれば1~3ヵ月程度で終わることもあります。

反面、買い手が見つからなければ半年から1年以上かかることもあるようです。

任意売却できなくてもお金はかかりますか?

多くの仲介業者は、任意売却が成功した際の仲介手数料のみを報酬とし、仮に成功しなかった場合には、一切の報酬を請求していないようです。

仲介業者の報酬は売却代金の中からの支払いとなるので、その意味では手出しは一切ないといえます。

競売が始まってしまってからでも任意売却できますか?

競売が始まっても、競売手続と並行して任意売却を進めることができます。

ただし、競売が始まっている場合にはタイムリミットがあり、任意売却できるのは落札者が決まる開札日の前日までとなります。

任意売却をしないですむ方法はありませんか?

任意売却はマイホームを手放すことを前提にした手続です。

しかし、司法書士などの法律家が関与して、任意整理や個人再生といった債務整理をすることでマイホームを失わずに済むかもしれません。

任意売却をするとブラックリストに載ってしまいますか?

任意売却をするからブラックになるのではなく、住宅ローンを延滞することでブラックになります。

住宅ローン以外に借金がある場合、その返済が延滞していればすでにブラックになっている可能性が高いといえます。

いわゆるブラックリストというものに載っても、その情報は5~10年程度で消えるので一生続くものではありません。

住宅ローンを滞納し続けるとどうなりますか?

住宅ローンを半年程度滞納すると、保証会社があなたに代わって、住宅ローンを一括で返済します(これを代位弁済といいます)。

これにより、債権者が保証会社に代わりますが、任意売却は代位弁済後の保証会社やサービサー(保証会社が委託した債権回収会社)を相手におこなうことになります。

任意売却もせずにそのまま放置していると、裁判所による競売手続が開始し、買い手が見つかれば、最終的には引っ越し先が決まっていなくても強制退去させられます。

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