終身建物賃貸借制度

3人に1人は高齢者といわれる時代になってきましたが、高齢であることが賃貸借契約にどのような影響を及ぼすのかをみていきます。

 

借地借家法では、借家契約を解除するには正当事由が要求されています。

 

では、正当事由とはいったい何なのかが問題となりますが、この点については

 

1. 賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情

 

2. 建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況

 

3. 立ち退き料の有無

 

とされており、1がメインで、2と3がサブと考えられています。

 

そこで、賃借人が高齢である場合に、それを理由に賃貸人が更新を拒絶できるのでしょうか。

 

賃借人が高齢であることは正当事由を判断する際の基本的要素となりますが、むしろこの場合は正当事由が認められない理由の一つになります。

 

というのも、高齢であると、それだけ転居先を見つけることも困難ですし、長年同じ場所に住んでいたのであれば愛着もあるでしょうし、地域の人とのつながりも無視できないからです。

 

これに対して、賃貸人が高齢でその建物を自分のために使う必要があるなどと言う場合は、若い賃貸人に比べれば更新拒絶の正当事由が認められやすくなります。

 

このように、高齢であると現実的に賃貸契約を締結することが難しいということもあり、平成13年から終身建物賃貸借制度という新た制度がスタートしました。

 

これは、60歳以上の高齢者等が都道府県から許可を得てバリアフリー化された住居を借りる契約で、賃借人が死亡したときに契約が終了するという条件が付いているものです。

 

さらに、賃借人が死亡しても配偶者は居住を継続できるとされているので、夫婦が終の棲家を確保できるわけです。

 

その後、平成23年に改正され、それまで問題とされていた点が改善され、更に利用しやすくなりました。

 

特徴をまとめると・・・

 

賃貸人 ⇒ 都道府県知事の許可を受けた者に限る。

 

住宅の基準 ⇒ バリアフリー対応住宅に限る。

 

賃借人 ⇒ 60歳以上の者に限る。ただし、賃借人の配偶者は60歳未満でも入居可能。

 

なお、賃貸人からの解約は、当該物件の老朽化が著しい場合や賃借人が長期間当該住宅に居住せず、当面居住する見込みがないために管理が困難な場合に限られ、なおかつ都道府県知事の承認も必要とされています。

 

よって、たとえ借地借家法の正当事由に該当しても、それを理由として賃貸人から解約の申し入れをすることはできません。

 

これに対して、賃借人からの解約申入れは6ヶ月前に通知すればOKで、老人ホーム等への入居や親族と同居するようになった場合であれば、1ヶ月前の予告でも解約可能です。

 

また、終身建物賃貸借制度は、通常の賃貸借と異なり、賃借権の相続が認められていません。

 

その代り、同居していた配偶者は、賃借人の死亡後1ヶ月以内に継続居住を申し出れば、その配偶者がたとえ60歳未満であっても、新たに契約を締結することができるようになっています。

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