不動産に関する訴えの管轄

一般的に訴額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円超であれば地方裁判所に訴えを起こすことになります。

 

では、建物明渡請求訴訟であれば、どちらの裁判所に提訴すればよいのか?

 

この点、不動産に関する訴訟事件については、訴額に関わらず地方裁判所にも管轄権があります。

 

つまり、訴額が140万円以下である不動産事件であれば、簡易裁判所にも地方裁判所にも管轄権があることになります。

 

よって、賃貸借契約終了に基づく建物明渡請求訴訟の訴額が140万円以下であれば、簡裁と地裁の両方に管轄権があるので、簡易裁判所に提訴してもよいし、地方裁判所に提訴してもよいということになります。

 

しかし、注意を要するのは、不動産に関する訴訟を簡易裁判所に提訴した場合でも、被告からの申し立てがあれば地方裁判所に移送しなければいけないという点です。

 

この移送については、裁判所の裁量ではなく、必要的移送とされているので、原告が簡易裁判所に提訴しても、被告から移送の申し立てがあれば、必ず地裁に移送されてしまいます。

 

次に、賃貸借契約終了に基づく建物明渡請求訴訟を、どこの場所の簡裁もしくは地裁に提訴すればよいかですが、候補としては以下の3つが挙げられます。

 

1. 被告(相手方)の住所地

 

2. 原告(自分)の住所地

 

3. 不動産の所在地

 

まず、被告の住所地であれば、請求の内容にかかわらず管轄があります。

 

また、財産権上の訴えであれば、その義務履行地にも管轄があるので、賃料の支払いを求める訴えであれば、特段の合意がない以上、債権者(貸主)の現住所が履行地となります。

 

よって、原告の住所地にも管轄があります。

 

この2つ以外にも、不動産の裁判では、不動産の所在地にも管轄があるので、建物明渡請求であれば不動産の所在地を管轄する裁判所にも提訴することができます。

 

ところで、賃借人に対する建物明渡請求および未払い賃料の支払請求と、保証人に対する未払い賃料の支払いに関する保証債務履行請求をまとめて提訴する際は、

 

賃借人対する請求について管轄権を有する裁判所に提訴すれば、仮に、その裁判所に保証人に対する請求の管轄権がなくても、

 

賃借人と保証人に対する訴えをまとめて不動産の所在地や賃借人の住所地の裁判所に提訴することができます。

 

なお、不動産に関する訴訟の訴額を算定するには、「目的たる物の価格の2分の1」と定められています。

 

ここでいう価格とは、固定資産税評価額なので、建物明渡請求訴訟の場合、その建物の固定資産税評価額の2分の1が訴額となります。

 

よって、簡易裁判所に提訴するには、建物の評価額が280万円以下であることが条件となります。

 

ただし、賃貸借契約において、建物の1室のみを借りているような場合、その建物全部の評価額を賃貸部分の床面積で割った分を訴額にすればよいとされています。

 

もし、評価がされていない建物であったり、登記がされていない建物の場合は、その不動産を管轄する法務局が作成した所有権保存登記の申請の際に使われる、

 

新築建物価格認定基準表および経過年数調整表をもとに訴額を算定することになります。

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