民法9条の日常生活に関する行為と市町村長による後見申立て

成年後見人が取り消すことができない日常生活に関する行為とは

成年後見人が選任されると、本人がした行為をあとから取り消すことができます。

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しかし、あらゆる行為を取消できるわけではなく、日常生活に関する行為は取り消すことができません。

これは民法9条で以下のとおり決められているからです。

第9条【成年被後見人の法律行為】

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。  

民法第9条

但し書きで、日用品の購入やその他日常生活に関する行為が取り消しの対象外にされている趣旨は、主に2つあります。

一つ目は、重要な契約ならいざ知らず、数百円や数千円レベルの日用品等の購入に後見人の同意が必要とするのは現実的ではないからです。

契約相手の立場で考えても、日用品等の購入時にいちいち後見人の同意が必要となると、被後見人との契約をしたがらなくなってしまいます。

二つ目は「本人保護」「自己決定権の尊重」の調和にあります。

そもそも成年後見制度の目的は「判断能力の不十分な成年者の保護」だけでなく、福祉充実の観点から「自己決定権の尊重」「現有(残存)能力の活用」「ノーマライゼーション」とされています。

そのような点を考慮すると、日用品の購入や日常生活に関する行為にまで後見人の取り消しの対象にするのは、成年後見制度の趣旨に反するといえます。

このような経緯から民法9条での但し書きで後見人の取り消し権の例外を規定しているわけです。

具体的にどういった行為が日常行為に該当するのでしょうか。

以下に一例を挙げておきますので参考にして下さい。

後見人が取り消しできない日常生活に関する行為

  • 食料品や日用品等の購入
  • 電気・水道・ガス等の契約締結や代金の支払い
  • 電車やバス等の利用
  • 子供や孫へ与える小遣い
  • かかりつけ医への医療費の支払い
  • 家賃の支払い

上記の場合であれば、本人が支出する金額もそれほど高価なものではないので、後見人の取消権の対象外となります。

ただし、常識に照らして高額な物品の購入であれば、日常生活に関する行為とは言えません。

この辺は、本人の資産状況によっても変わってくるので、一概に線引きはできません。

成年後見人 は、上記のような日常生活に関する行為には取消権がありませんが、これらの行為を代理することは可能です。

つまり、日常生活に関する行為については、取消権はありませんが、代理権はあるということになります。

成年後見の申し立てをすることができる人は、以下のとおりです。

成年後見の申立てができる人

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 市町村長

通常は、本人の配偶者や子どもや両親などの親族が申し立て ることが多いです

しかし、中には親族がいなかったり、いても申し立てに協力してくれない場合があります。

そういった場合は、市町村長が申し立てをすることができます。

市町村長が申し立てできる場合

  • 4親等内の親族がいない場合
  • 4親等内の親族がいても、音信不通だったり、申し立てを拒否している場合
  • 虐待等の理由により、親族による申し立てが適当でない場合

よって、近い親族で申し立てをしてくれそうな人がいなくても諦めてはいけません。

詳しくは、お近くの福祉事務所や市役所、社会福祉協議会等にご相談されることお勧めします。

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