資本金の減少に対する無効の訴え

株式会社では、資本金を減少させることができますが、その際は株主総会で以下の項目を決めなければいけません。

 

1. 減少する資本金の額

 

2. 減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額

 

3. 資本金の額の減少がその効力を生ずる日

 

資本減少を決議する際の株主総会は原則的に特別決議である必要がありますが、これは、資本減少が一部解散、清算の要素があると考えられているからです。

 

また、資本金の減少は、株主への分配可能額に影響を及ぼすので、原則的に債権者保護手続きが要求され、資本金の額は登記事項であるため、減少の効力が発生した場合は、その旨の変更登記をする必要があります。

 

もし、資本金の額の減少に無効原因がある場合、裁判所に無効の訴えを提起することができます。

 

会社法では、無効原因の規定を置いていませんが、株主総会の決議に手続き上または内容上の瑕疵があったり、上記の債権者保護手続きが取られなかったり、取られていてもその手続きに瑕疵がある場合等が考えられます。

 

訴えることができる期間には限りがあり、資本金の減少が効力を生じてから6ヶ月以内です。

 

この訴えの原告になれる者は、株主や資本金の減少を承認しなかった債権者等で、当該会社の取締役、清算人、業務監査権限を有する監査役、執行役も含まれます。

 

申し立てる裁判所は、当該会社の本店所在地を管轄する地方裁判所で、もし、複数の無効の訴えが起こされた場合は、1つに併合されます。

 

原告が勝訴した場合、つまり、資本金の減少が無効であることが確定した場合、その効力は第三者にも及び、何人も資本金の減少の有効性を主張することはできなくなります。

 

ただし、無効の判決が確定しても、無効とされた資本金の額の減少は、将来に向かってその効力を失うにとどまります。

 

つまり、遡って無効になることはないことになりますが、これは、法律関係の安定と取引の安全のためです。

 

そして、無効が確定したときは、裁判所が職権で法務局にその登記を嘱託します。

 

これに対し、原告が敗訴した場合、その判決の効力は、訴訟当事者のみに生じるだけですが、もし、原告に悪意もしくは重大な過失があったときは、原告は、当該会社に対して、連帯して損害賠償をする義務を負います。

 

なお、会社法では、準備金の減少に対する無効の訴えは認められませんでした。

 

これは、準備金の減少は登記されず、債権者保護手続きがおこなわれないこともあるので、債権者が準備金の減少を知ることができない場合、提訴できる期限を決めてしまうと、債権者の裁判を受ける権利を害する恐れがあるからです。

 

また、準備金は登記事項ではないため、登記の信頼性を確保する見地から、対世効のある判決は不要だからです。

 

なお、過払い金を請求する相手の貸金業者が、資本金を減少することはしばしばあります。

 

そういった場合には、借主も当該会社の債権者に該当しますので、債権者保護手続きで異議を述べることができますので、当該会社の資本金減少の手続きを承認できないのであれば、公告されてから1ヶ月以内に書面で異議の通知を出す必要があります。

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