準備金の減少

株式会社には、資本金と準備金がありますが、資本金は会社法の規定によって算出され、貸借対照表に記載される計算上の金額です。

 

株式会社の資本金の額は、原則として設立もしくは株式の発行に際して、株主となる者が払込みまたは給付した財産の額ですが、払込み等に係る額の2分の1を超えない額は、資本金に組み入れないことが可能です。

 

準備金は、旧商法時代は利益準備金と資本準備金に分けられていましたが、会社法では両者に違いがないことから単に準備金としています。

 

この準備金は株主総会の決議で減少することができますが、その際は以下の項目を決める必要があります。

 

1. 減少する準備金の額

 

2. 減少する準備金の額の全部または一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額

 

3. 準備金の額の減少がその効力を生ずる日

 

旧商法では、準備金の資本組み入れを取締役会の決議によってすることができましたが、会社法では株主への剰余金の配当を困難にすることから株主総会が要件とされています。

 

ただし、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日以後の準備金の額が、当該日前の準備金の額を下回らないときは、取締役会の決定によって、準備金の額を減少することができます。

 

なお、準備金の減少をすることで、株主への分配可能額に影響が出るため、原則的に債権者保護手続きが必要となります。

 

これに対して、減少する準備金の全部を資本金にするのであれば、債権者が不利益を受けることはないから、債権者保護手続きは不要です。

 

また、準備金の額のみを減少する場合でも、定時株主総会の日における欠損の額として、法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合も、債権者保護手続きは不要です。

 

なお、法務省令で定める方法である会社法施行規則では、①ゼロ、②ゼロから分配可能額を減じて得た額のいずれか高い額をもって欠損の額とする方法としています。

 

もし、債権者が異議を述べることができる場合は、会社は官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にその旨を催告する必要があります。

 

ここで異議を述べる期間は、1ヶ月を下ることはできず、債権者が期間内に異議を述べなかった場合には、準備金の減少を承認したものとみなします。

 

これに対し、期間内に異議を述べた場合には、当該債権者に対し、弁済等の手続きをしなければいけませんが、準備金の減少をしても債権者を害するおそれないときは、この弁済等の手続きも不要です。

 

なお、効力発生日は、株主総会の決議で定めた効力発生日ですが、債権者保護手続きが終了していないときは、終了までは効力が発生ないとされています。

 

過払い金の返還請求の局面でも、相手の貸金業者が準備金を減少することがありますので、上記の債権者保護手続きが不要なケースでなければ、債権者として異議を述べることができます。

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