特定調停の特徴と申立て手続き

過払い金請求が盛んにおこなわれるようになった平成18年以前は、簡易裁判所で特定調停という手続きが流行していました。

特定調停の特色は、債務者本人が司法書士等の専門家にお願いすることなく、利息制限法に引き直しした残額を無利息で分割返済できるという点です。

特定調停の申し立てがされると、裁判所の調停委員(民間の有識者)が間に入って、分割返済の話を進めてくれるので、債務者本人が貸金業者と直接交渉をする必要がありません。

そういった点から、一時期は良く利用されていたわけですが、当然デメリットもあります。

それは調停でまとまった分割返済をきちんと履行しないと、調停で決まった内容は判決と同じ効力があるため、もし、返済が滞った場合には、相手業者から差し押さえを受ける危険性があるということです。

通常の和解契約であれば、仮に約束どおりに返済ができなくなったとしても、直ちにその和解契約に基づいて、強制執行を受けることはありませんので、その点が大きく異なります。

また、仮に、特定調停の手続き中に、過払い金の存在が判明したとしても、裁判所が過払い金を回収してくれるわけではなく、別途、自分で相手業者に対して過払い金請求をしなければいけないという点です。

なお、特定調停において、過払い金の存在が明らかになった場合、債務者が貸金業者に負っている借金は一切ないという文言が入るだけで、過払い金の存在については一切触れません。

とはいえ、このようなデメリットがあるとしても、当時の状況下においては、特定調停は非常に魅力的な手段の一つだったわけです。

しかし、平成15年に司法書士に簡裁代理権権が付与されてからは、債務者本人がわざわざ自分で特定調停の申し立てをしなくても、司法書士が本人に代わって、相手業者と分割返済の交渉(いわゆる任意整理)をしてもらえるようになりました。

そして、平成18年の最高裁判決によるみなし弁済の事実上の否定と相まって、特定調停の利用件数は激減したわけです。

現在では、個人の借金を整理するために特定調停を利用する例はほとんどないといってよいのではないでしょうか。

これには、司法書士が借金整理をおこなえることが一般市民にも浸透したことと大いに関係があると思われます。

司法書士の側からみても、わざわざ判決と同じ効力が発生してしまう特定調停を申し立てるメリットはないので、通常であればあえて特定調停を利用することはありません。

しかし、すでに差押えを受けているような場合、特定調停の申し立てをすることで、その強制執行を停止する効力があるので、そういった特殊な場合に限ってはまだ特定調停を利用するメリットはあると思われます。

ところで、かなり稀なケースではありますが、貸金業者の中に、こちらが過払い金の返還訴訟を提起したにもかかわらず、調停の申し立てをしてくるところがあります。

この場合の調停は、借金の返済を話し合う特定調停ではなく、一般の民事調停です。

しかし、こちらは通常の訴訟を起こしているのに、その後に調停の申し立てをしてくるメリットは通常はありません。

なぜなら、そのような調停を申し立てられても、こちらとしては通常の裁判を起こしている以上、調停は無視するのが普通だからです。

では、なぜ、一見するとメリットがなさそうな調停の申し立てをするのかといえば、それは債務者本人宛に裁判所から郵便物が届くからです。

これはどういうことかといえば、家族に内緒で過払い金請求をしている者にとっては、自宅宛てに貸金業者や裁判所から郵便物が届くと家族にバレる危険があります。

この点、過払い金訴訟では書類の送付先は依頼先の事務所宛てになっているので、裁判所からの書類が依頼者本人の自宅宛てに届くことはありません。

また、司法書士が代理人になっていると、相手業者も直接、本人宛に書類を送付することは禁止されます。

しかし、裁判所に調停を申し立てれば、裁判所から調停申立書が本人宛に郵送されることになるので、たとえ司法書士が代理人に就いていても、本人宛に裁判所からの書類が郵送されてしまいます。

もちろん、調停が申し立てられたことが判明した後は、司法書士が調停事件の代理人になることで、それ以降の書類の送付先は事務所に変更することが可能です。

しかし、いつ相手業者から調停申し立てがされるかはこちらにはわからないことなので、どうしても一番初めの調停申立書だけは本人宛に郵送されてしまうのです。

こういう手段を取ることで、少しでも過払い金を減額させようという目的があるのだと思います。

もちろん単なるいやがらせ的な意味合いもあるものと思われます。

とはいえ、調停の申し立てをしてくるような業者は限定されていますし、調停の申し立てをされる可能性も極めて低いので、通常の場合はそのような心配をすることはありません。

次は、実際に裁判所に特定調停を申し立てる際の手続きについてみていきます。

特定調停は、自分の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てることになりますが、費用は印紙や切手代込みで数千円で済みます。

 

申し立て段階で、借入先と自分の収入等を記載した書面を提出すれば、裁判所が間に入って分割返済の和解をまとめてくれて、利息制限法を超える金利で支払っているものがあれば、適正金利で計算し直した金額で話を進めてくれます。

 

ただし、長期間の取引の場合、引き直し計算をすることで、すでに借金がなくなった上で、逆に過払い金が発生している場合があります。

 

そこで、特定調停で過払い金まで回収してくれるのかどうかが問題となります。

 

この点、特定調停はあくまでも借金の支払いに困窮した場合に、その支払方法について調整する手続きなので、たとえ過払い金が発生していても、その回収まではしてくれません。

 

そういった場合には、借主は貸主に対して一切の支払義務はない、という決定を出すだけなので、あくまでも過払い金は自分で回収しなさいというのが裁判所のスタンスです。

 

そのため、あらかじめ過払いであることが予想されるような場合には、特定調停は向いていないことになります。

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なお、すでに強制執行を受けている場合でも、特定調停を申し立てることができます。

 

その場合、特定調停には既に受けている強制執行を一時的に停止させる効力もあるので、当事者間での話では解決しそうにない場合は、裁判所に間に入ってもらい、なおかつ、強制執行も停止してもらえる特定調停は魅力的な選択肢といえます。

 

ところで、特定調停を申し立てれば、必ず分割返済の和解が成立するのかどうかというところが気になるところです。

 

多くの貸金業者は裁判所が仲介すれば、よほど非現実的な和解内容であれば、調停に応じているのが現状です。

 

しかし、中には強硬なサラ金業者もおり、そういった業者が相手だと分割返済での和解には一切応じない姿勢を変えないこともあり、そうなってしまうと調停が不成立となります。

 

なぜなら、調停はあくまでも話し合いで成立するものなので、一方が反対している以上、裁判所といえでも強制的に分割払いを認めるわけにはいかないからです。

 

なお、一方が和解に応じなくても、裁判所が妥当な和解案と判断すれば17条決定というものを下すこともできるのですが、これに対して、相手方が2週間以内に異議を出せば決定は効力を失います。

 

次に、調停が成立した場合の効力についてですが、調停が成立すると判決と同じ効力が発生します。

 

これはどういうことかといえば、もし、成立した内容どおりに返済ができなかった場合は、強制執行を受ける恐れがあることを意味します。

 

司法書士等が各社と和解交渉する任意整理では、あくまでも当事者間で和解書の取り交わしをするだけなので、仮に、その後、返済が滞ったとしてもいきなり強制執行を受ける心配はありません。

 

なぜなら、強制執行するには判決等の債務名義というものを取得しておかなければならないからです。

 

つまり、特定調停がまとまった場合に作成される調停調書というのは、判決等と同じ債務名義なわけです。

 

よって、特定調停は司法書士等に頼まずに借金を整理できる手続きではありますが、もし、返済が滞った場合には強制執行を受ける恐れがあるので、司法書士等への報酬がかからずに安上がりな特定調停を選択するか、報酬は発生しても債務名義が取られることはない任意整理を選択するか悩ましいところですが、現在においては、司法書士等への報酬も数年前よりかなり下がってきているので、ほとんどの方は自分で特定調停するよりも、司法書士等に任意整理の依頼をしていることが多いかと思われます。

 

当事務所は千葉市にありますが、通常の事件であれば特定調停は選択せずに任意整理で処理しています。

 

しかし、ごく稀にではありますが、相手方がどうしても話し合いに応じないような場合は、裁判所に間に入ってもらうために、あえて調停を申し立てることあります。

 

ただ、分割返済を希望している場合は、調停調書が債務名義となり、将来的に強制執行を受ける恐れがあるので、その利用については慎重に判断をしているのが実際のところです。

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