内縁の配偶者の相続

近年は、価値観の多様化もあり、日本でも内縁という形をとる男女が増えてきています。

 

しかし、このような内縁は、民法の建前である婚姻届を出すことによってはじめて婚姻は成立するという法律婚主義と相反します。

 

そのため、内縁の妻には、死亡した夫の遺産についての相続権はなく、その結果、夫の遺産を相続することはできません。

 

また、内縁の妻から産まれた子の嫡出性についても認められていません。

 

よって、内縁の夫が死亡しても、夫に相続人がいない場合に限って、特別縁故者として家庭裁判所に相続財産の全部または一部の分与を求める申し立てができるに過ぎません。

 

しかし、内縁関係が単に事実上のものだからといっても、特に女性である相手方をそのまま放置することは保護に欠けると言わざるを得ません。

 

そこで、裁判所も婚姻に準ずる関係として保護するようになってきています。

 

また、労災関係では、法律的にも内縁の妻に保険金受領権を認めており、夫が交通事故で死亡した場合には内縁の妻が加害者に対して損害賠償請求をすることができますし、労災保険による遺族補償給付の受給権も認められています。

 

このように現在では内縁関係ではあっても

 

1. 氏の変更

 

2. 子の嫡出性

 

3. 相続権

 

以外はすべて認められているわけです。

 

このように、内縁は婚姻に準ずる関係であるとの理由で、近年ではより一層の保護が図られてきていますが、相続権がない以上、たとえば内縁の夫が多額のサラ金を借り入れていた場合、

 

たとえあとから過払い金の存在が判明しても、内縁の妻が相続人としてサラ金業者に対して不当利得返還請求権を行使することはできません。

 

これに対し、賃借権ではより一層の保護が図られています。

 

内縁だと相続権がないため、例えば内縁の夫が家屋を賃借していた場合、その家屋の賃借権は相続財産に含まれ、相続の対象になります。

 

そのため、家屋賃借権は内縁の夫の相続人が相続することになるため、内縁の妻に家屋の明け渡し請求をすることができます。

 

しかし、このような場合に最高裁は

 

「相続人と内縁の妻との建物使用状況および必要度などの事情を考慮したうえ、相続人の請求は権利の濫用として許されるべきではない」

 

と判断しました。

 

また、仮に家主から内縁の妻に相続権がないことを理由に明け渡し請求されても、内縁の妻は相続人の賃借権を援用することで明け渡し請求を拒否することができます。

 

借地借家法でも、内縁の者に相続人がいない場合に限定はしていますが、その内縁配偶者に賃借人の権利義務の承継を認めています。

 

この他には、同居、共同扶助の義務や貞操を守る義務もありますし、婚姻費用の分担義務、日常家事によって発生した債務の連帯責任も認められています。

 

内縁関係を解消する場合、事実上夫婦として生活しているに過ぎないため、同居をやめるといったように事実上の処理をすれば一切関係がなくなります。

 

この点は、婚姻の解消そのものを争うことができる法律上の婚姻とは違います。

 

しかし、内縁関係の解消を全く自由なものとすると、特に女性側の保護に欠けるといわざるを得ませんので、内縁関係が不当に破棄された場合には慰謝料請求の対象にもなります。

 

つまり、正当な理由もなく一方的に内縁関係を破棄した者は、相手方に慰謝料を払わなければいけないということになるわけです。

 

これは、内縁の当事者だけに関わらず、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させた第三者も例外ではありません。

 

この点につき、最高裁は

 

「内縁の当事者でない者であっても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させたものは、不法行為者として損害賠償の責任を負う」

 

との判断を下しています。

 

また、内縁関係にもなるべく婚姻に準じた法律効果を与えようという趣旨から、内縁の解消に際しては、財産分与の請求が認められており、たとえ慰謝料の請求をしていても、それとは別に財産分の請求をすることが可能です。

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