登記上の住所と現在の住所

売買等により、不動産の名義を変更する場合に気を付けなければいけないのが、売主の住所です。

一般的な感覚だと、売主の住所が変わっていようが、どうせ新たな買主名義に変更するのだから、大して重要ではないと思いがちですが、不動産登記においては超重要です。

なぜなら、不動産登記は権利変動の過程を忠実に反映するのが基本だからです。

住所が変更しただけでは、所有権自体に変更はないので、それほど重要ではないと考えがちですが、所有者の住所が変更した場合は、その住所変更登記をしておかないと、新たな買主名義に移転登記をすることはできません。

よって、登記の順番は次のとおりとなります。

1. 売主の住所変更登記

2. 売主から買主への所有権移転登記

なお、所有権移転登記をする際は、売主の印鑑証明書を添付する必要があるのですが、その印鑑証明書上の住所と登記上の住所が合致させないといけません。

そのため、所有権移転登記の前提として、まずは登記上の売主の住所を現在の住所に変更しておく必要があるわけです。

もし、住所変更登記を申請しないまま、所有権移転登記を申請した場合は、登記上と印鑑証明書上の住所が合致しないとして、その申請は却下されてしまいます。

よって、実務上は非常に地味ではありますが、登記上の住所と現住所が同一であるかどうかは非常に重要で、司法書士であれば当然、見落としてはいけないポイントなのです。

ところで、一言で住所が変わったといっても、その原因は様々です。

最も一般的なケースは、単に引っ越しをした場合ですが、この場合は実際に住んでいる場所を移動しているので、住民票を添付すれば前住所も記載されていますので、登記上の住所から新たな住所に移ったことが一目瞭然です。

なお、複数回、住所を移転している場合は、1件の申請により、現在の住所へと変更することができますが、その場合、登記上の住所から現在の住所までのすべての住所変更の事実を証明する必要があります。

また、住んでいる場所は同じにもかかわらず、行政区画が変更されたり、町名や地番が変更されることがあります。

同じように、住んでいる場所は同じでも、住居表示が変わる場合もあります。

いずれの場合も、住んでいる人は同じ場所におり、行政上の都合で住所の表記が変わったに過ぎません。

しかし、こういった場合でも、住所変更登記を経由しなければ、売買等の所有権移転登記をすることはできません。

住所変更の登記を申請する際の登録免許税は、不動産1個につき1000円となりますが、住居表示等による変更の場合、所有者自身が移転したわけではないので、行政区画の変更があったり、住居表示が実施されたことの証明書を添付することで、登録免許税は非課税となります。

ところで、実際にお目にかかることは少ない事例ではありますが、通常の住所変更と住居表示実施等が複数である場合もあります。

こういった場合でも、登記原因を「年月日住居表示実施、年月日住所移転」、「年月日住所移転、年月日町名変更、地番変更」等と表記した上で、一括で申請することが可能です。

以上は、登記上の所有者の住所について述べてきましたが、氏名が変更になった場合も同じ考えです。

つまり、結婚や養子縁組等が原因で、登記上の氏名と現在の氏名が異なる場合には、登記上の氏名を現在の氏名にしてからでないと、売買等による所有権移転登記を申請することはできないということになります。

なお、氏名変更と住所変更の両方をする必要がある場合には、これらを1つの申請で変更することも可能です。

その場合、登記原因を「年月日住所移転、年月日氏名変更」と記載すればよく、登録免許税も不動産1個につき1000円で済みます。

このように、売買等による所有権移転登記を申請する際は、売主の登記上の表示が、現在の住所、氏名と合致しているかどうかは非常に重要なので、絶対に見落とさないようにしなければいけないわけです。

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