登記申請人と代理権の不消滅

不動産登記では、登記の申請人が誰になるのかが非常に大切です。

 

通常の売買であれば、売主が登記義務者、買主が登記権利者といった具合に単純ですが、以下のようなケースで誰が申請人になるかみていきたいと思います。

 

まず、被相続人が亡くなる前に売却した不動産の売買登記をせずに亡くなってしまい、その相続人が売買の事実を知らずに当該不動産について相続登記をしてしまったとします。

 

こういった場合に、生前に当該不動産を買い受けた者名義にするにはどうすればいいのでしょうか。

 

方法としては2つ考えられます。

 

まず、一つは、錯誤を原因として相続登記を抹消したうえで、改めて相続人全員を登記義務者、買主を登記権利者とする所有権移転登記をする方法です。

 

もう一つは、相続登記を抹消せずに、直接、買主を登記権利者、相続によって登記名義人となった相続人を登記義務者として、生前の売買日付を登記原因日付とする売買による所有権移転登記をする方法です。

 

結論としては、どちらでもOKです。

 

よって、手続き的には相続登記を抹消せずに、直接、登記名義人となった相続人から買主への所有権移転登記をすることになると思われます。

 

次は、権利能力なき社団である地縁団体が売買によって不動産を取得したとします。

 

しかし、その所有権移転登記をする前に当該社団が地方自治法の市町村長の認可を受けた場合、直接、当該認可を受けた認可地縁団体名義で登記することができるか、です。

 

そもそも、権利能力なき社団には、法人格が与えられていないので、不動産を取得したとしても社団名義で登記することはできず、基本的には代表者個人名義で登記する必要があります。

 

よって、権利能力なき社団である地縁団体も、その代表者名義で登記することになりますが、地縁団体の場合、市町村長の認可を受けることで法人格が与えられます。

 

これを、一般的に認可地縁団体というのですが、法人格が与えられる以上、当該地縁団体名義で登記することが可能になります。

 

そこで、上記のケースで、売買登記未了の間に認可地縁団体になった場合に、いきなり地縁団体名義で登記することができるかどうかが問題となりますが、これについては、不動産を取得した地縁団体と当該認可を受けた地縁団体に同一性が認められるのであれば、直接認可地縁団体名義に登記することができるとされてます。

 

3つ目は、被相続人が生前に第三者に売却した不動産の売買登記が未了のうちに亡くなってしまい、その唯一の相続人が家庭裁判所に相続放棄した場合、誰が売買登記の登記義務者になるのかという問題です。

 

この点、家庭裁判所に相続放棄をした相続人は、初めから相続人でなかったものとされますので、その者が登記義務者になることはできません。

 

よって、こういった場合は、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が登記義務者となって、買主と共同申請で売買登記をすることになります。

 

4つ目は、未成年者が登記申請に関わる場合です。

 

未成年者であっても、意思能力を有する未成年者であれば、親権者の同意を得ることで自己所有の不動産を売却することが可能です。

 

そこで、親権者の同意は不動産の売却についてだけでよいのか、それとも登記申請に対する同意まで必要になるかが気になるところです。

 

この点については、登記申請行為それ自体は、私法上の法律行為ではなく、また、実質的な取引をなす行為でもなく、定型的なものなので登記申請には行為能力は要しないとされています。

 

よって、登記申請の原因となる不動産の売却自体に親権者の同意を得ているのであれば、別途、登記申請の同意を得ることなく、未成年者が登記申請人になることは可能とされています。

 

不動産を担保に借金した場合、無事に借金を完済できれば担保を抹消する必要があります。

 

しかし、抹消登記をするまでに、当該不動産の登記名義人が亡くなってしまったような場合、いきなり抹消登記を申請することはできません。

 

こういった場合、まずは相続を原因とする所有権移転登記を経由したうえで、その登記名義人となった相続人を登記権利者、貸金業者を登記義務者として抹消登記を申請することになります。

 

当事務所でも、よく、債務整理のついでに担保抹消登記をすることがありますが、必ずしも借金を完済した場合だけでなく、返済の途中でも利息制限法で引き直し計算をしてみたところ、過払い金が発生していることが判明することもあります。

 

よって、不動産担保の場合であっても、高金利であれば完済前に担保を抹消できる可能性があります。

次に、代理権の不消滅についてみていきます。

司法書士は、不動産登記や商業登記の代理人になることができます。

 

また、認定司法書士には、140万円を超えない簡易裁判所における訴訟代理権や訴訟外の代理権も付与されています。

 

そこで、今回は不動産登記を司法書士が代理人となって申請する場合の手続きについてみていきたいと思います。

 

ところで、不動産登記法が改正され、従来の登記済証制度から登記識別情報制度へと変更になりましたが、登記識別情報の通知は、その登記をすることによって登記名義人となった申請人に通知されるのが原則です。

 

しかし、申請人である登記名義人以外でも、登記識別情報を受けるための特別の委任を受けた司法書士等の代理人は、当該登記についての登記識別情報を受け取ることができます。

 

次に、法人の代表者から登記申請の委任を受けたが、登記申請前に当該代表者の代表権限が消滅してしまった場合です。

 

不動産登記法17条では、委任による登記申請代理権の不消滅に関する規定があります。

 

この規定が存在する根拠は、登記申請の代理は、登記が完了することを目的としてなされるもので、民法の代理権消滅の規定をそのまま適用すれば、代理の目的を達成することができなくなるからです。

 

なお、同法で規定されているのは、以下の4つです。

 

1. 本人の死亡

 

2. 本人である法人の合併による消滅

 

3. 本人である受託者の信託に関する任務の終了

 

4. 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更

 

この規定は委任者の法定代理人の代理権が消滅した場合にも適用があります。

 

そして、この法定代理人には法人の代表者も含まれるとされています。

 

よって、登記申請に添付された委任状の作成名義人である法人の代表者が、現在の代表者ではないと認められるときでも、当該代表者の代表権限が消滅した旨および当該代表者が代表権限を有していた時期を明らかにして、

 

当該法人の登記記録でそのことを確認できるか、もしくは、当該代表者の代表権限を証する情報が申請ん書に添付されている場合には、これを適法な登記申請の代理権限情報として取り扱ってもよいことになります。

 

具体的には、当該代表者から司法書士への委任時に代表権限があったことがわかるように、閉鎖登記事項証明書の添付を要するとされていますが、この閉鎖登記事項証明書は作成後3ヶ月以内であることを要しません。

 

また、登記申請の委任がなされた後に、委任者が死亡した場合の登記手続きですが、登記申請代理権は本人の死亡によっては消滅しないので、相続人が作成した委任状を添付する必要はなく、当初の本人の委任状を添付すればよいとされています。

 

しかし、当該登記の申請自体は、委任者の相続人を本人とする登記の申請と解されるので、申請書には相続人の住所、氏名を申請人として記載したうえで、相続があったことを証する戸籍等を添付しなければいけないとされています。

 

次は、未成年者の単独親権者から登記申請の委任を受けた後、当該親権者が家庭裁判所から親権喪失の宣告を受けた場合です。

 

この場合、親権喪失の宣告を受けた以上、未成年者の法定代理人たる地位は失ってはいますが、同法17条4項に該当するため、委任による代理人の権限は消滅しません。

 

よって、登記申請時に親権がなくても、司法書士は当時の委任に基づき、登記申請をおこなうことができます。

 

また、代理権不消滅の規定は、司法書士が復代理人に選任されている場合にも適用があります。

 

つまり、復代理において最初の代理人が死亡したとしても、復代理人の登記申請代理権は消滅しないので、申請書に本人から代理人への委任状および代理人から復代理人への委任状を添付すれば、復代理人から登記を申請することができます。

 

ところで、民事訴訟法58条においても、当事者の死亡によって訴訟代理権が消滅することはないと規定されています。

 

よって、例えば、過払い金返還訴訟の委任を受けた司法書士が裁判を遂行中に本人が死亡したとしても、訴訟代理権は消滅しません。

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