無剰余売却の禁止

平成17年の民事執行法改正により、執行裁判所は以下の場合に差押債権者に無剰余の通知をします。

 

1. 差押債権者の債権に優先する債権がない場合においては、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるものの見込額を超えないとき

 

2. 優先債権がある場合においては、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき

 

無剰余通知があった場合、差押債権者は所定の期間内に以下の事項を証明しないと、競売手続きが取り消されます。

 

1. 自ら買受けの申出をする

 

2. 剰余が生じる

 

3. 優先債権者の同意を得る

 

具体的には、無剰余通知を受けてから1週間以内に、上記3つのいずれかの証明をする必要があります。

 

もし、取消決定が通知された場合は、執行抗告をすることができますが、取消決定が確定した場合の差押登記の抹消にかかる登録免許税やその他の費用は差押債権者の負担になります。

 

よって、買受可能価額は通常の任意売却の価額より低くなるのが一般的なので、無剰余競売になるおそれがある場合は、自ら保証金を用意して買受けの申出をするくらいの覚悟がないと、不動産執行をしても無駄になる可能性があるので注意が必要です。

 

債務整理の場面でも、サラ金等の債権者が不動産に対する強制競売をしてくるのではないかと心配になる場面があります。

 

しかし、すでに住宅ローンが設定されていて、仮に、競売が実施されたとしても、住宅ローンの残金にも満たない程度の売却価額して付かないようなケースであれば、

 

一般のサラ金等の貸金業者がすでに担保の付いている不動産に対して、強制競売を申し立ててくることは現実的にはまずありません。

 

それは、上記のとおり、無剰余通知に該当するケースであるから、執行費用等の実費を考えても強制競売をするメリットがないからです。

 

よって、サラ金等による不動産担保付借入れのケースで、過払い金が発生していないかどうかを調べるために、事前に取引履歴を取り寄せて引き直し計算をすることがありますが、その担保の他にも先順位の担保があるなどして、その担保まで配当がない見込みが高い場合は、担保権の実行による競売を心配する必要はほとんどないといってよいと思います。

 

次に、強制競売を申し立てるための要件をみていきます。

 

主なものは以下のとおりです。

 

1. 執行力ある債務名義の正本 ※確定判決や仮執行宣言付判決(支払督促)です。

 

2. 送達証明書 ※債務名義が債務者に送達されていることの証明です。

 

なお、不動産に対し、強制競売の申し立てをする場合、債務名義上の債務者の表示と不動産の所有者が一致する必要があります。

 

よって、債務者が死亡しているにもかかわらず、相続登記がなされていない場合は、まず債務名義に承継執行文の付与を受け、これを代位原因証明情報として代位による相続登記をしたうえで強制競売の申し立てをする必要があります。

 

これに対し、債務名義上の債務者が相続人で、被相続人が死亡したために、その相続財産に強制競売の申し立てをする場合は承継執行文の付与は必要ありません。

 

この場合、債務名義に執行文の付与を受けて、それを代位原因証明情報として代位による相続登記を申請し、その相続登記がされた登記事項証明書を提出すればよいことになります。

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