賃貸借契約終了前の敷金返還請求権の差押え

建物を賃貸する場合、契約時に敷金を2ヵ月分ほど支払うのが通常です。

この敷金返還請求権がいつから発生するかというと、賃貸物件を明け渡した時です。

 

となると、明け渡す前に敷金返還請求権を差し押さえることができるかどうかですが、賃貸借契約が終了する前の段階でも敷金返還請求権を差し押さえることは可能です。

 

今だ、賃貸借契約が終了していない場合、敷金返還請求権は将来発生することになる権利ですが、こういった権利についても、現在、すでにその原因が確定し、権利を特定することができ、その発生の確実性が高く、財産的価値の高いものであれば差押えは可能とされています。

 

では、賃貸借契約が終了する前の段階で、賃貸人に敷金返還請求権の差押命令が届いた場合、賃貸人はどうすればよいのでしょうか。

 

この場合、賃貸人とすれば、いまだ敷金返還請求権は具体化していませんから、差押債権者に敷金を支払う必要はありません。

 

賃貸人は、賃貸借契約が終了し、明け渡しが完了した際に、未払い賃料や損害金が発生していれば、それを敷金から控除して、その残額を差押債権者に支払えればよいことになります。

 

これは、賃貸借契約は終了したが、明け渡しが未了の段階で差押命令が到達した場合も同様です。

 

つまり、明け渡しが完了していない以上、敷金返還請求権は具体化していませんので、明け渡しが完了するまでは賃貸人は差押債権者に返済する必要ないわけです。

 

ただし、明け渡し完了後に差押命令が届いた場合、差押債権者は1週間が経過すれば敷金を賃貸人から取り立てることができるようになり、もし、賃貸人がこれに応じない場合は、取立訴訟を起こすことも可能です。

 

また、差押命令が賃貸人に届けば、賃貸人は賃借人に敷金を返還することが禁止されますので、もし、差押命令の送達後に賃貸人が賃借人に支払いをしても、差押債権者との関係では返済の効力は生じません。

 

なお、差押債権者は、敷金返還請求権に対して転付命令を求めることも可能です。

 

その場合、敷金返還請求権が賃貸人から差押債権者に譲渡されたのと同じ効力が発生しますので、賃貸人は差押債権者に敷金を返還しなければならなくなります。

 

このように、敷金返還請求権は条件付き権利ではありながらも、将来発生する可能性が高い権利なので、明け渡し完了によって、その額が確定する前の段階であっても差押えをすること自体は可能なのです。

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