ハウスクリーニング特約と賃借人の負担

アパートなどの賃貸借契約書には、特約が小さな文字でたくさん規定されており、その中に

 

「賃借人は退去時にハウスクリーニング代を負担する」

 

と書かれている場合があります。

 

そういった場合、賃借人は無条件にハウスクリーニング代を負担しなければいけないのかどうかが問題となります。

 

確かに、賃借人には原状回復義務がありますので、退去時には通常の清掃(拭き掃除や水回り、換気扇、レンジ設置個所の油汚れの清掃、ゴミの撤去など)はする必要があります。

 

しかし、ハウスクリーニングというのは通常は専門業者に依頼をして、その部屋を入居前の状態とほぼ同じ程度に戻す作業であり、洗浄の手段や技術も専門的なものなので、このようなハウスクリーニングは一般人がする掃除とは大きく異なります。


よって、ハウスクリーニングは、賃借人が負っている原状回復義務を超えているといえます。

 

もし、賃貸借契約書にハウスクリーニングの条項がなければ、当然、賃借人が負担することはありませんが、契約書にこの条項があればどうでしょうか。

 

上記のとおり、こういった専門業者がおこなうような清掃を負担させる条項は、賃借人の原状回復義務を超えているため、特約があるからといって直ちに賃借人が負担しなければいけないというわけではありません。

 

平成17年の最高裁判決でも、こういった特約が成立するには

 

1. 契約書自体に、賃借人が負担することになる通常損耗を超える範囲が明確に記載されていること

 

2. 契約書に定められていない場合、賃貸人が口頭で説明し、賃借人がそれを明確に認識して、その上で合意したこと

 

といった条件をクリアーする必要があると判示しました。

 

つまり、ハウスクリーニング特約は原則的に賃貸人の負担であるという考えに立ち、それを賃借人に負担させるとなると新たな負担を負わせることになるので、特約が成立するのは極めて限定的とされるべきといえます。

 

よって、単に「賃借人はルームクリーニング代を負担する」と書かれていただけでは、その特約が有効とはいえません。

 

この点、国交省のガイドラインでも、ルームクリーニング特約が有効になるには

 

1. 賃借人が負担することになる内容が明確であるか

 

2. 本来であれば賃借人の負担とならない通常損耗分をも負担させることの趣旨および負担することになる通常損耗の範囲が明確になっているか

 

3. その費用が妥当であるかどうか

 

という3つのをポイントに挙げています。

 

次に、ペットの飼育が許されている場合に

 

「ペット消毒については賃借人の負担で専門業者へ依頼するものとする」

 

とされていた場合はどうでしょうか。

 

ペットを飼育していると、どうしても特有のにおいや衛生上の問題が発生しますので、通常の場合よりは特約の有効性が認められる可能性が高いと思われます。

 

ただし、ペットの飼育を認めている代わりに、家賃が近隣の相場よりも高ければ、ペット飼育を認めることで発生する諸々の負担は最初から賃料に含まれていると考えることもできるので、ペット飼育が可能な場合でも、通常の場合と同じように、特約の明確性、契約時の説明状況などを検討したうえで、特約の有効性を検討する必要があると思われます。

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