賃貸契約の更新料と保証人

賃貸借契約における更新料が有効なのかどうかについては、今まで裁判所でも判断が分かれていましたが、更新料特約の有効性について、平成23年の最高裁判決で初判断が下されました。

 

この最高裁判決によると

 

「更新料は高額すぎないなどの特別の理由がない限り有効」

 

とされました。

 

ただ、高額であるかどうかは、更新料の額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間などを総合して判断することになります。

 

なお、もともと契約書に更新料の定めがなければ、仮に賃貸人から請求されても支払う必要はありません。

 

では、更新料特約が有効である場合に、更新料を支払わなかったら、それが理由で契約を解除されてしまうのかどうか。

 

賃貸契約契約を解除するには、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊するような事情が必要ですので、更新料のみを支払っていないという理由だけでは、契約を解除することはできないと思われます。

 

ただし、更新料の不払いの他に何らかの事情で、信頼関係を破壊しているといえるような特別の事情があれば、契約が解除される余地はあると思われます。


また、更新料の不払いだけでも信頼関係を破壊しているといえるような特別の事情があれば、賃貸契約を解除される可能性はあります。

 

また、契約期間が迫っても、双方から更新しない旨の通知をしないと、賃貸借契約は更新したものとみなされます。

 

これを法定合意更新といいますが、この場合に更新料特約が有効かどうかが問題になる場合があります。

 

これは、双方が合意して更新したわけではないので、そういった場合にまで、従前の契約書に規定されていた更新料特約を適用してよいものかどうかという問題ですが、これについては、裁判所の判断がわかれています。

 

更新料の支払義務を免れるとするのは不公平であるとした裁判例もありますが、逆に、更新料の特約を有効に成立させるには合理的根拠が必要なので法定更新の場合には認めるべきではないとした裁判例もあります。

次に、賃貸借契約と保証の関係を見ていきます。

賃貸借契約を締結する際は、通常、保証人を要求されます。

 

保証人には借主の家族がなることが多いとは思いますが、実際に保証人がどの範囲まで責任を負うのかが気になるところです。

 

もし、借主が家賃を半年間滞納し、その結果、大家が保証人に

 

「借主が半年間も家賃を滞納したから契約を解除しました。よって、保証人にであるあなたに滞納家賃と明け渡しまでの損害金を支払ってほしい」

 

と言われたら支払う義務があるのでしょうか?

 

この点につき、民法447条1項は

 

「保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する」

 

と規定しているため、賃貸借契約の保証人もこれに従い、滞納家賃だけではなく、明け渡し不履行によって生じた損害金の支払義務を当然に負うことになります。

 

これに対して、実際に建物を明け渡す義務は、借主の一身専属的債務とされているので、保証人が借主に代わって明け渡す義務まではありません。

 

よって、建物賃貸借の保証人には、建物明渡義務まではないということになりますが、他方で、借主が建物を明け渡すまでは、滞納家賃や損害金等が増えていきますので、保証人としては建物が明け渡されない限り、賃貸人に対する支払金額が増加することになります。

 

次に、賃貸借契約が更新された場合に、保証契約もそれに連動して更新されるかどうかです。

 

この点については、平成9年11月13日最高裁判決で、原則的に当初の賃貸借契約でなされた保証契約の効力は更新後の契約に及ぶとされました。

 

しかし、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情があったり、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合は更新後の契約に及ばない場合もあり得ます。

 

また、原則的には保証契約の効力は更新後の契約に及びますが、たとえば

 

1. 契約から著しく長期間経過している場合

 

2. 保証人が保証したとき比べて賃料額が著しく増額された場合

 

3. 延滞期間が長期にわたっているにもかかわらず賃貸人が解除しなかった場合

 

等の場合は、保証人の当初の予想を超えるとして、保証人の責任がすべて否定されたり、もしくは、保証人が予想できた範囲に限定して責任が認められる可能性があります。

 

最後に、保証契約を一方的に解除できるかどうかです。

 

これについては、無条件の一方的解除は認められませんが、いかなる場合でも解除できないとするのは保証人に酷なので、

 

1. 期間の定めのない保証契約であること

 

2. 相当の期間が経過したこと

 

3. 賃借人がしばしば賃料の支払いを怠り、将来においても誠実にその債務を
履行する見込みがないこと

 

4. それにもかかわらず、賃貸人が依然として賃借人に当該家屋の使用収益をさせ、賃貸借の解除や明け渡しなどの措置を執らないこと

 

の要件を満たせば、保証人による一方的な解約が認められる余地があります。

 

いずれにせよ、賃貸借契約の保証人になると、その保証契約を解除するのは容易ではないので、保証人になるかどうかは十分に検討された方がよいでしょう。

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