貸付停止処理と消滅時効

過払い金の消滅時効の起算点は、最高裁判決により、取引が終了した時とされています。

しかし、貸金業者の中には、借主の弁済の遅れや信用状態の悪化等を理由に、取引の途中で新規の貸し出しを中止する処理をしている場合があります。

そうなると、それ以降は新たな借入れが想定されなくなるので、それを理由に貸し出し停止処理をしたときから消滅時効が進行すると主張してくる業者がいます。

なぜ、こういった主張をしてくるのかといえば、消滅時効の起算点に関する最高裁判決の中で、基本契約が継続している間は、発生した過払い金を新たな借入金債務に充当する旨の過払金充当合意が法律上の障害になっているという箇所があるからです。

つまり、貸金業者が貸出停止処理をすることで、新たな借入金債務の発生は見込めなくなるので、その結果、法律上の障害がなくなるから、貸出停止処理をした時点から消滅時効が進行するという理屈です。

ところで、貸金業者が貸出停止処理をおこなう主な理由としては、以下の事由が考えられます。

1. 信用状態の悪化

2. 退職

3. 初期延滞

4. 高齢

6. 示談

貸金業者は、借入れ状態に関する独自の社内基準を設けており、これに抵触した場合には、新規の貸付けを停止していることが一般的です。

借主が退職した場合も停止理由になります。

また、決められた返済日に入金されず、貸金業者が独自に定めている基準を超える程度の延滞をした場合も停止理由になります。

さらに、借主自身の年齢自体が停止理由になることもありますし、延滞がひどく、その後、借主と貸金業者の間で示談している場合も新たな貸付けが停止されます。

以上が主な停止理由ですが、1~4に関しては、その原因が解消したときは、貸付けが再開される可能性が十分にあると考えられます。

つまり、一度、信用状態が悪化したとしても、その後、順調に返済を続けたことで借入金額等が社内基準をクリアーすれば、貸金業者としても収益を上げるために、再び貸し出しを再開することは珍しくありません。

退職によって停止した場合も、新たな就職先が見つかれば、安定した返済が見込めるので、貸金業者としても、再び借入れをしてもらった方がより多くの利息収入を得ることができるので、貸付けの再開に応じる可能性は十分あります。

また、延滞をしていた場合も、よほどの延滞ではない限り、延滞が解消した以上は再貸付けをおこなっているところが多いのが現状です。

貸金業者としては、より多くの貸し出しをして、その分の利息収入を得ることが第一目的ですから、仮に、上記の理由で貸付停止処理がおこなわれても、信用情報機関から与信情報を収集する等して定期的に貸出停止処理を取り消すかどうかの判断をおこなっています。

よって、いったん貸出停止処理がされたとしても、それがずっと続くと決まったわけではなく、その後、貸出が再開される可能性はあるのですから、単に、貸付停止処理がされたというだけでは、最高裁判決のいう法律上の障害がなくなったとはいえないと思われます。

では、上記の理由のうち、高齢や示談が原因で貸出停止処理がされた場合はどうでしょうか。

この場合、貸金業者の側からすれば、二度と貸出停止処理を解消する気がないかもしれません。

しかし、通常、貸金業者の側から借主に対して、貸出停止処理をしましたと通知することはありません。

つまり、借主としては、新たに借入れをしようと思ってATMからお金を引き出そうとした時点で、初めて借入れができないことに気付くことが珍しくありません。

このような場合、借主としては、新たな借入れができなくなったことは分かりますが、なぜ借入れができなくなったのか、再び借入れをすることができるようになる可能性があるのかについてまでは分かりません。

もし、借主が貸付けが停止された理由を貸金業者に聞いても教えてくれるとは限りませんし、将来の貸付け再開の可能性に含みを持たせた回答をする場合もあります。

なぜなら、貸付再開の可能性があった方が、借主としてはまた借入れができるようになるために、なんとかそれまでは頑張って返済しようと思うのが一般的だからです。

よって、仮に、貸金業者側からすれば、貸出しを再開する可能性がないという扱いをしていても、借主側からすれば、その事実を明確に告知されていない限り、また、貸付再開の可能性があると思ってしまうのが普通です。

そのような借主の心理状態からすれば、とても最高裁判決が指摘する法律上の障害がなくなったとはいえないので、よほど客観的にみても借主が明確に貸付けの再開がないことを認識していたような事情がない限りは、原則どおり、取引が終了するまでは消滅時効はスタートしないといえるでしょう。

ただし、貸金業者が、借主に対して、明確に貸付けを再開することはないことを通知していたり、当事者間で貸し出しを再開しないことを合意していたような場合には、過払い金返還請求権を行使するうえで、法律上の障害がなくなったといえる可能性がありますので、そういった場合には貸金業者の主張が認められる可能性はゼロではないかと思われます。

いずれにせよ、単に貸付停止処理がされ、それが一方的なものであり、借主がその事実を知らなかったような場合には、原則どおり、消滅時効の起算点は取引が終了したときになります。

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