協議離婚の要件

協議離婚は、役場に備え付けてある離婚届に署名押印し、提出することで成立します。

ここでいう「協議」というのは

1. 離婚することについての意思の合致

2. 未成年の子がある場合は、父母のいずれが親権者になるかを決めること

の2つをいいます。

なお、離婚届には必ず本人が自署しなければならず、捺印も本人自らの意思による必要がありますが、印鑑は実印である必要はなく、認印や三文判で構いません。

また、離婚届でには証人2人以上の署名押印も必要になりますが、証人は成年であれば他に制限はありません。

添付書類としては、夫婦の本籍地でない役場に提出するときは、戸籍謄本が必要になります。

役場への届出は、郵送でも他人に頼んでも構いませんが、本人が直接持参するのが確実です。

なお、過払い金を請求する際も、離婚をして当時と名前が変わっていることを気にされる方が多いですが、全く問題ありません。

そういった場合、債権者へ通知を送る際に、旧姓と現姓を併記して通知を送ることで、同一人物からの請求かどうかが判明します。

ところで、離婚意思の合致はどの時点で必要かが問題になります。

この点、離婚の意思は離婚届で作成時はもちろん、届出書が受理された時点でも合致していなければいけません。

よって、一方が届出前に離婚の意思を撤回し、届出前に不受理の申出をした場合、もう一方が離婚届出を役場に提出しても離婚は成立しません。

また、本人が知らない間に勝手に出された場合や、仮装離婚は無効です。

しかし、詐欺や強迫によって離婚届が提出された場合は、詐欺を発見し、または強迫を逃れたときから3ヶ月以内であれば、離婚の取り消しを主張することができます。

なお、離婚は一身専属的な権利ですから、成年被後見人も正常な状態に復しているときであれば、後見人の同意を得ることなく単独で離婚の決断が可能です。

このように、日本の協議離婚の手続きは非常に簡単になっています。

そのため、よく考えずに離婚の届出をしてしまったり、一方が強硬に届出をしてしまうなどといった弊害もあります。

以下に、協議離婚をする際の注意点を挙げておきます。

1. 未成年の子がある場合、どちらが親権者になり、養育費の負担をどうするのかをきちんと決めておく

2. 財産分与や慰謝料の請求をする場合は、その内容を決めておく

3. 婚姻により氏を変更している方は、旧戸籍に戻るのか、新戸籍を作るのか、離婚後の氏をどうするかを決めておく

養育費の支払いを求める場合は、その金額、支払方法だけではなく、履行の確保を含めて十分に検討をしておく必要があります。

その意味でも、公正証書を作成しておくのがベターといえます。

財産分与は離婚後2年、慰謝料については3年以内であれば請求することは可能ですが、こちらも離婚時に決めておく方がよいでしょう。

離婚後も婚姻時の氏を使いたいのであれば、離婚届と同時にすることもできますが、離婚後であれば3ヶ月以内にその旨を届け出る必要があります。

次は離婚事件において解決すべき代表的な事項をみていきます。

1. 離婚請求

2. 未成年の子の親権者・監護者の指定

3. 離婚給付(財産分与、年金分割、慰謝料、養育費)

4. 面接交渉権

もし、すでに別居しているのであれば、離婚までの婚姻費用の分担請求も問題になります。

ところで、離婚については、まずは当事者間の話し合いが基本となり、世の中の9割程度は協議離婚で終わります。

これに対して、当事者間での話し合いがまとまらない場合、裁判所を利用して解決を図ることになります。

裁判所での手続きとしては、以下の3つがあります。

1. 調停

2. 審判

3. 訴訟

人事訴訟事件では、調停前置主義が採用されているので、訴訟を起こす前に調停の申し立てをしなければいけません。

その際に、離婚請求と一緒に、未成年の子の親権者、監護者の指定、慰謝料の請求、養育費の支払い、財産分与請求、年金部活の請求をすることができますが、婚姻費用の分担請求については一緒に請求することはできないので、離婚請求とは別に婚姻費用分担調停を申し立てる必要があります。

調停では、調停委員の仲介により、離婚へ向けて話し合いが進められますが、必ずしも調停が成立するとは限りません。

そういった場合、家庭裁判所は、調停成立の見込みがないとして、調停に代わる審判をすることができますが、この審判に対しては、当事者の一方から2週間以内に異議の申し立てがあると効力を失ってしまうため、実務上はあまり利用されていません。

そのため、調停が不成立になった場合は、離婚訴訟を起こして、判決による離婚を請求することが一般的です。

ところで、離婚判決を得るためには、離婚原因に該当する事実を立証する必要があり、法定の離婚原因が存在するかどうかがポイントです。

離婚原因の一つに、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がありますが、婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合を指します。

具体的な判断としては、婚姻継続の意思の有無、双方の年齢、職業、資産収入、健康状態、性格、子の有無、婚姻中における両当事者の行為や態度等、一切の事情が総合的に判断材料になります。

裁判所は別居期間の長さを重視する傾向があるので、別居の有無、別居期間も一つのポイントで、現在の実務では5年の別居期間が一つの目安となります。

次に、未成年の子がいる場合に、大きな問題になる親権者、監護者の指定、養育費、面接交渉権をみていきます。

裁判所としては、夫婦のどちらが親権者、監護者になることが子の利益と幸福になるのかを考えますが、その際には以下のような考え方があります。

1. 継続性の原則

2. 子の意思の尊重

3. 兄弟姉妹不分離の原則

4. 母親優先の原則

継続性の原則というのは、実際に子を監護してきた者を優先させるという考え方です。

また、子供が15歳以上であれば、子の意思を尊重し、10~15歳では子の心身の発達状況によって子の意思を尊重します。

未成年の子が複数いる場合、兄弟姉妹は一緒に育てるべきであるとする考えがあります。

乳幼児については、特別の事情がない限りは母親に監護させるのが子の福祉に適うという裁判例もありますが、近年は事案ごとに親権者としての適格性を判断し、以前よりも母親優先ではない傾向が出てきています。

次に、養育費の支払いについてですが、その算定方法は従来、親の収入、子の必要生活費、親の負担能力を考慮して金額を決めてきましたが、いちいち個別具体的な事情を考慮して金額を算出するとなるのは非常に手間暇がかかるので、近時は、東京と大阪の家庭裁判所の裁判官からなる研究会が作成した算定表に基づき算定されています。

面接交渉権については、明文上の規定はありませんが、面接交渉の要求は正当な権利で審判事項であることが認められてますが、子の福祉に合致しない場合は認められません。

最後に、離婚により、姓が変わった場合の過払い金請求でも、旧姓を併記して通知を出すことで、全く問題なく返還請求することが可能です。

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