公正役場での離婚証書の作成と将来債権の予備的差押え

協議離婚をする際は、婚姻届を提出すれば済みますが、未成年の子がいる場合の養育費の支払いや慰謝料や財産分与の問題があります。

こういった取り決めをする場合、双方が書面を作成し、署名押印しておくのが望ましいですが、単に書面を作成するよりも良い方法があります。

それは、公証役場で公正証書を作成するという方法です。

公正証書にするメリットは以下のとおりです。

1. 公正証書の原本は公証人が20年間保存するので紛失の恐れがない

2. 裁判をしなくても、公正証書にもとづき強制執行が可能

3. 法律の専門家である公証人が作成するので内容的な疑義が発生する可能性が極めて低い

1.については、もし、当事者が公証人から渡された公正証書の謄本を紛失しても、原本自体は公証人役場で保管しているので、謄本の再発行が可能です。

2.については、万が一、相手方が約束どおりに金銭の支払いに応じなかった場合に重宝します。

なぜなら、強制執行をするには原則的には裁判を起こして判決等の債務名義を取得する必要があるのですが、公正証書を作成しておけば、裁判をしなくても、その公正証書にもとづき、相手方の給料、不動産、預貯金等を差し押さえることができるからです。

よって、公正証書を作成しておけば、相手方は支払いをしないと、強制執行される恐れがありますので、通常の場合よりも支払の履行が期待できることになります。

この点、貸金業者が債務者に貸付けをする際に、公正証書を作成している場合があります。

これも、公正証書を作成しておくことで、もし、債務者が支払いを怠ったときに、裁判等の手続きを経ることなく強制執行できるからです。

これに対し、過払い金を回収する場合、あらかじめ公正証書を作成しておくことは不可能であるため、原則どおりに裁判手続きをして判決等の債務名義を取らなければ強制執行はできません。

なお、公正証書で強制できる権利は、あくまでも養育費や慰謝料等の金銭の支払いに限られ、それ以外の子供との面接権や物の引渡しについては強制力はありません。

しかし、強制力はないといっても、当事者間の約束として公正証書に記載しておくメリットはあります。

この公正証書を作成するには、当事者双方が直接、公証人役場に出向くのが原則となります。

必要な物としては、実印と印鑑証明書、運転免許証やパスポート等の身分証明書となりますが、事前に問い合わせてしておくのが無難です。

また、公証人役場は全国にありますが、特に住所地の近くの公証人役場でなければならないという決まりはありません。

よって、都合の良い役場で作成して構いません。

参考までに、千葉県には11の公証人役場(千葉に2つ、船橋、市川、木更津、銚子、松戸、柏、成田、館山、茂原)があります。

当事者の都合がつかず、代理人に行ってもらいたい場合は、実印を押した委任状、当事者及び代理人の印鑑証明書、代理人の実印が必要になります。

作成費用は、支払金額によって異なりますので、事前に公証人役場にお問い合わせください。

次は、将来債権の予備的差押えについてです。

離婚時に未成年者の子がいる場合、夫が妻にその子が成人になるまで養育費を支払うことは珍しくありません。

この場合、単に口約束だけしておく方法でも有効ではありますが、もし、将来的に支払いが滞った場合に備えて、公正証書にしておくという手もあります。

これは、公正証書の条項に執行認諾条項をつけておけば、もし、支払いが滞っても、相手の給与等に対して強制執行をすることで、簡易迅速に回収することができるからです。

この点、従来は養育の支払いを公正証書で定めておいても、過去の延滞分についてだけしか強制執行することができませんでした。

しかし、養育費は多くてもせいぜい毎月10万円前後の少額であるにもかかわらず、毎月の延滞を強制執行の要件としていたのでは、いちいち少額債権の回収のために強制執行の手続きをしなければいけないことになります。

そうなると、手続き的に非常に面倒ですし、回収で切れなければその都度、費用倒れに終わってしまうため、現実的とはいえません。

また、相手である夫はサラリーマンであることがほとんどであるにもかかわらず、毎月の給料の4分の3は差押禁止となっているので、結局は4分の1しか差押をすることができません。

その結果、実際の延滞分の取り立てが、相当長期間に及ぶという問題点がありました。

そこで、養育費や婚姻費用の分担金の支払いなど、家事関係の少額定期債権の履行確保を図るために、平成16年4月から将来債権の予備的差押えが認められることになりました。

民事執行法の一般原則では、請求債権が確定期限(平成25年7月末日等)の到来にかかっている場合には、強制執行もその期限が到来しない限りおこなうことができません。

これに対し、改正法では以下の4つの家事債務に限定して将来債権の予備的差押えを認め、差押の範囲も従来の4分の1から2分の1に拡大されました。

なお、差押範囲の拡大については、請求債権が以下の4つに該当すれば、差し押さえる債権が定期金債権である必要はありません。

つまり、養育費債権を回収するために、夫の退職金を差し押さえる場合にも2分の1の適用があることになります。

1. 夫婦間の協力扶助義務に基づく扶助料債権

2. 婚姻費用分担義務に基づく分担金債権

3. 子の監護に関する義務に基づく養育費債権

4. 親族間の扶助義務に基づく扶養料債権

もし、上記の債権の一部に不履行があり、かつ、差押対象が給料債権やその他の継続的給付債権(不動産等の賃料債権など)であれば、将来債権の予備的差押えが可能となりました。

実際に差押え手続きをおこなった場合、債権者は債務者に対して、差押命令が届いた日から1週間を経過すれば、給料の支払いをする第三債務者から直接、取立をすることができます。

もし、第三債務者が支払いに応じない場合には、差押債権者は第三債務者に対して、差し押さえた債権にかかる給付を求める訴えを提起することができます。

これにより、差押債権者は第三債務者に対しても強制執行をおこなうことができるようになりますが、もし、第三債務者が国や地方公共団体等、支払いが確実になされるようなところであれば、

取立訴訟ではなく、支払いに代えて券面額で差し押さえられた金銭債権と差押債権者に添付することを求める、転付命令の申し立てをした方がよいでしょう。

転付命令のメリットは、転付命令が第三債務者に送達された時をもって、被転付債権が差押債権者に移転するとともに、その移転した範囲で差押債権者の請求債権が消滅する点です。

つまり、差押債権者が被転付債権を有することになるので、他の債権者と差押が競合したり、配当に加入することができなくなるわけです。

ただ、注意を要するのは、転付命令によって差押債権者が被転付債権について独占的な満足を受けることができる反面、仮に、第三者が無資力力者であるような場合、たとえ現実的な満足を受けられなくても転付命令の確定によって請求債権は当然に消滅してしまうところです。

よって、転付命令は第三債務者が金融機関や国等、支払いが確実なところでないと、利用するのは控えた方がよいこともあります。

なお、よく相談時に聞かれるのですが、離婚をして姓が変わっても、過払い金返還請求に影響はありませんのでご安心ください。

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