相続と時効の問題

例えば、相続人が署名押印すべき遺産分割協議書に対して、他の者が勝手に当該相続人に成り代わって署名押印した遺産分割協議書は無効です。

 

また、相続人の一部の者を欠いたままおこなわれた遺産分割協議も無効です。

 

この無効には消滅時効がないので、いつでも誰からでも無効を主張出来ます。

 

しかし、無効な遺産分割協議書に基づいて、第三者がが不動産を取得した場合、10年又は20年の時効取得という制度があり、それが完成すると無効な行為であっても有効となります。

 

時効の効力は起算日に遡及するため、相続開始時から第三者が当該不動産の所有権を取得したことになります。

 

つまり、大雑把に言うと、時効取得により占有者が所有者になるわけです。

 

このように、真の所有者であっても、法律行為をすべき時に放置したり、気付かなかったりすると、後になって当該法律行為を行えなくなることがあります。

 

よって、権利を行使するのは、出来る時にしておいた方が賢明かと思われます。

 

また、民法1042条は、「遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時は時効で消滅する。相続開始の時から10年経過したときも同様。」と規定しています。

 

 

当該条文前半の1年間は消滅時効ですが、当該条文前半の10年は時効ではなく、法律上は除斥期間と呼ばれるのが通説です。

 

除斥期間は時効と違い中断がありません。

 

早期に法律関係を確定させるために、一定の期間経過によって権利を消滅させる制度が除斥期間だからです。

 

つまり、相続開始を知らない場合でも、相続開始から10年経過で一律に減殺請求は不可能になってしまうわけです。

 

なお、減殺請求を内容証明郵便でしておけば、後でいつ減殺請求をおこなったかが問題になることはないので安心です。

 

このように、法律行為をすべき時に放置したり、気付かなかったりすると、後になって当該法律行為を行えなくなることは多々あり得ますので、やはり、権利を行使したい場合は出来る時にしておいた方が賢明かと思われます。

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