和解の無効

過払い金請求をおこなおうと、貸金業者から取引明細を取り寄せてみると、過去に和解をしているようなケースがあります。

 

こういったケースでの和解の典型例は、借主に取引履歴が開示されないまま、過払い金の存在も知らずに、貸金業者側の主張する約定残債務額を基準にしている場合がほとんどです。

 

しかし、一度、和解をしてしまうと、和解の確定効により、あとから過払い金の存在が発覚しても、果たして請求することができるのかどうかが問題となります。

 

なぜなら、民法上では、和解当時の客観的な権利関係が、和解内容と食い違っているという理由だけで、和解を無効にすることはできない、とされているからです。

 

とはいえ、一度、和解をしてしまったからといって、絶対にその和解を覆すことができないというわけではなく、あくまでも、和解の確定効は、和解の対象となった事項についてのみ生じるとされているので、和解契約の対象ではなかったことについては和解の確定効は及びません。

 

貸金請求における和解書には、一般的に清算条項が入っていますが、和解の確定効により、過払い金返還請求権も消滅してしまうかどうかが問題となります。

 

この点を考える上では、当事者間における和解において、なにが和解の対象になったのかが重要です。

 

返済に困った借主が貸金業者と和解をする場合、その多くは約定利率で計算した残債務をベースに、毎月の返済額と返済期間を決定します。

 

当然、その際に、利息制限法に基づいた引き直し計算がおこなわれることはなく、借主は過払い金の存在さえ知らないことがほとんどです。

 

こういった場合には、たとえ当事者間で残債務の支払いについての和解が成立していても、過払い金の存否および額については、和解の確定効は及ばないと考えられます。

 

よって、和解で支払うことになった金額が、約定残債務額と同一もしくは多少減額した程度であれば、なお、過払い金の返還請求が可能といえます。

 

また、すでに成立した和解を、要素の錯誤によって無効と主張することもできます。

 

錯誤無効が成立する場合の要件としては、①引き直し計算の結果と和解内容に大きな乖離があり、②借主がその事実を認識せず、③認識しなかったことが借主側の事情に起因すること、とされています。

 

たとえば、約定利率での残債務が50万円で、これを毎月1万円の50回払いで和解した場合でも、引き直し計算をすれば、すでに50万円の過払いであったような場合、

 

借主がその事実を知らず、それが貸金業者から取引履歴の開示がされなかったためといった原因によるものであれば、法律の要素について借主に動機の錯誤があるといえ、その動機は表示されているといえるので、借主に重大な過失がない以上は、和解が錯誤により無効になると考えられます。

 

ただし、取引履歴が一部開示され、あえて残りの開示を求めずに、開示された範囲で計算した過払い金で和解したような場合には、錯誤があったとはいえないと思われますし、全部開示されていた場合もあとから和解を覆すのは非常に困難です。

 

ところで、利息制限法を超える金利が事実上認められなくなったのは、平成18年の最高裁判決以降ですが、これ以降に和解をした場合、貸金業者は借主も過払い金の存在を知ることができたのであるから、あとから和解を覆すことはできないと主張してくることがあります。

 

しかし、平成18年以降の和解であっても、和解時に取引履歴の開示がされず、借主が過払い金の存在を知らなかったのであれば、錯誤により和解が無効となる可能性は十分にあると考えられます。

 

和解の無効に関する最高裁の考えは、たとえ裁判上の和解であっても、民法の意思表示の規定の適用対象となり、その和解内容に錯誤があれば無効となりうるというものです。

 

よって、たとえ和解が成立していたとしても、和解書の文言のみに拘泥せずに、一般法律行為の解釈基準に従って、柔軟に有効無効を判断する必要があるといえます。

 

もし、過払い金の存在を知らされないまま、業者の言いなりで和解をしてしまった場合でも、和解の無効を主張できる可能性がありますので、もしやと思う方はお気軽にご相談ください。

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