保佐人の権限

成年後見制度の3類型のうち、今回は真ん中の保佐についてみていきます。

 

保佐は、従来の準禁治産の制度に代わるもので、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人が対象です。

 

具体例を挙げれば、日常の買い物くらいはできるが、民法13条に挙げられているような法律行為は単独でできない、くらいの程度となります。

 

なお、保佐人は、法律上当然に代理権を持つことになる後見人とは異なり、

 

家庭裁判所が特定の法律行為について保佐人に代理権を付与することで初めて、当該行為の代理権を有します。

 

また、この代理権付与の審判を裁判所が職権ですることはなく、必ず法律上決められた請求権者からの申し立てによっておこなわれます。

 

この請求権者には、本人以外に配偶者、四親等内の親族等がいますが、本人の自己決定権を尊重して、

 

代理権付与請求が本人以外の者によってなされる場合には、本人の同意が必要になります。

 

なお、保佐人に代理権を付与するといっても、包括的代理権を与えることができないため、請求する際には法律行為を特定する必要があります。

 

特定の程度については、例えば、本人が複数の不動産を所有しているような場合に、いちいち不動産を特定することまでは要さず、

 

本人所有の不動産の売買といったように、ある程度包括的な代理権を請求することは認められています。

 

ただし、本人が現実に居住している不動産を売却する場合は、仮に、保佐人に不動産売却の代理権が付与されていても、

 

居住用不動産の処分は、本人に大きな影響を及ぼすため、別途、家庭裁判所の許可が必要になります。

 

なお、居住用不動産については、売却のみならず、賃貸、賃貸契約契約の解除、抵当権等の担保設定でも家裁の許可を要します。

 

もし、家裁の許可を得ずに無断で、居住用不動産を売却等しても、それらの行為は無効です。

 

また、保佐人には上記代理権の他に、民法13条1項所定の行為につき、同意権を有します。

 

つまり、保佐人には、民法13条1項所定の同意権、同意なき行為の取消権もしくは追認権が当然に認められ、

 

特定の代理権については、本人の同意があり、かつ、家裁へ請求することにより、保佐人に与えられます。

 

なお、被保佐人は単独で遺言をすることができます。

 

これは、遺言が特に本人の意思を尊重すべき身分行為であるからです。

 

そのため、被保佐人のみならず、被後見人であっても事理弁識能力を一時回復している場合は、単独で遺言が可能です。

 

ただし、被後見人が遺言する場合、医師2人以上の立会いが必要で、

 

立ち会った医師は、遺言者が遺言時において精神上の障害により、事理弁識能力を欠く状態になかった旨、

 

つまり、精神上の障害はあっても、一時、遺言をすることについて判断できる状態に回復していた旨を

 

遺言書に付記して、これに署名押印しなければいけないことになっています。

 

これに対し、被保佐人は、日常の買い物くらいはできるが、民法13条所定の法律行為を単独ではできないというレベルなので、

 

制限能力者ではあっても、被後見人とは異なり、医師の立会いは不要とされています。

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