給料差し押さえは回避できる!通知後の流れと生活を守る対処法

借金や税金の滞納で督促の通知が届き、「給料を差し押さえられたらどうしよう」と不安に感じていませんか。

給料の差押は、ある日突然行われるわけではなく、法律に基づいた流れに沿って実行されます。

この記事を読めば、差し押さえが実行されるまでの流れや、実行された場合の生活への影響を正確に理解できます。

さらに、差し押さえを回避するための具体的な対処法を知り、最悪の事態から脱却するための一歩を踏み出せるようになります。

この記事でわかること

  • 給料差し押さえが実行されるまでの法的な手続きの流れ
  • 差し押さえの対象となる給料の上限額と職場への影響
  • 滞納原因に応じた、差し押さえを回避・停止する方法

給料差し押さえは突然行われない!通知が届いてから実行されるまでの全ステップ

給料の差し押さえは、債権者(お金を貸した側)が法的な手続きを踏んだ後に行われる強制執行の一種です。

支払いが滞ってから、いきなり差押が実行されることはありません。

必ず、電話や書面による督促、そして裁判所からの通知といった段階的な流れを踏みます。

この差し押さえの手続きを理解することで、どの段階で何をすべきか、冷静に判断するための知識を得られます。

まずは、通知が届いてから実際に給料が差し押さえられるまでの流れを具体的に確認しましょう。

強制執行とそれに伴う取立権については「強制執行と取立権、転付命令」で詳しく紹介しています。

ステップ1:電話や郵便による督促・催告

返済期日を過ぎると、まずは債権者から電話や郵便で支払いを促す連絡が入ります。

初期段階では「督促状」「催告書」といった表題の通知が普通郵便で送られてくるのが一般的です。

この時点では、まだ法的な強制力はありません。

しかし、これらの請求を無視し続けると、債権者は法的手続きへ移行する準備を始めます。

この段階で誠実に対応すれば、まだ差し押さえを回避できる可能性は十分にあります。

ステップ2:裁判所から「支払督促」や「訴状」が届く

債権者からの督促を無視し続けると、債権者は裁判所へ申し立てを行い、法的な手続きを開始します。

裁判所から債務者(お金を借りた側)の自宅へ「支払督促」「訴状」といった書類が特別送達という特殊な郵便で届きます。

これは、債権者が本格的に訴訟を起こしたことを意味する公的な通知です。

この通知を受け取った場合、異議申し立てなどの対応をしなければ、債権者の主張が全面的に認められてしまいます。

ステップ3:裁判所から「仮執行宣言付支払督促」または「判決」が下される

裁判所からの「支払督促」に対して2週間以内に異議申し立てをしなかった場合、債権者は「仮執行宣言」の申し立てが可能になり、「仮執行宣言付支払督促」が裁判所から送付されます。

また、訴訟の場合は、裁判が行われた後に「判決」が下されます。

これらの書類は「債務名義」と呼ばれ、債権者が強制執行(差し押さえ)を行うための法的な権利を証明するものです。

この命令が確定すると、差し押さえは目前に迫った段階となります。

ステップ4:会社に「債権差押命令」が送付され強制執行

債務名義が確定すると、債権者は裁判所に「債権差押命令」の申し立てを行います。

これが認められると、裁判所から債務者の勤務先である会社に対して「債権差押命令」が送付されます。

この通知を受け取った会社は、法律に基づき、給料の一部を債務者本人ではなく債権者に直接支払う義務を負います。

これにより、給料の差し押さえが実行され、債務が完済されるまで毎月の給料から天引きが続くことになります。

この段階まで進むと、会社に通知がいくことを避けることはできません。

給料の全額がなくなるわけではない!法律で定められた差し押さえの上限額

給料が差し押さえられると聞くと、生活費が一切なくなってしまうのではないかと不安になるかもしれません。

しかし、法律(民事執行法第152条)では、債務者の生活を保障するため、差し押さえてよい給料の金額に上限を定めています。

原則として、給料の全額が対象になることはなく、一定額は手元に残すことが可能です。

この差し押さえ禁止額の範囲を理解しておくことで、今後の生活設計を立て直しやすくなります。

ここでは、具体的な差押の上限額や計算方法について詳しく解説します。

差し押さえが禁止されている給料の範囲とは

法律で差し押さえが原則禁止されているのは、給料(税金や社会保険料を控除した手取り額)の4分の3にあたる部分です。

つまり、差し押さえの対象となるのは、手取り額の4分の1が上限となります。

ただし、手取り額が33万円を超える場合は、33万円を超過した全額が差し押さえの対象となります。

例えば、手取り額が50万円の場合、33万円を超えた17万円が差し押さえの対象です。

このルールにより、最低限の生活費は法的に保護されており、給料の大部分は手元に残ります。

手取り給与額ごとの差し押さえ上限額シミュレーション

具体的にいくら差し押さえられるのか、手取り給与額ごとにシミュレーションしてみましょう。

原則として、差し押さえ額は手取りの4分の1です。

  • 手取り20万円の場合:20万円×1/4=5万円
  • 手取り28万円の場合:28万円×1/4=7万円
  • 手取り36万円の場合:36万円×1/4=9万円

一方、手取りが44万円を超える場合は計算式が変わります。

  • 手取り50万円の場合:50万円-33万円=17万円

このように、自分の手取り額を基に計算すれば、差し押さえられる上限額を把握できます。

養育費や税金の滞納は差し押さえの上限額が異なるため注意が必要

養育費の滞納による差し押さえは、借金の場合と比較してより広い範囲で認められています。

養育費は生活保持義務に関わる重要なものと見なされるため、差し押さえの上限額が高く設定されており、具体的には手取り額の2分の1まで差し押さえが可能です。

さらに、手取りが66万円を超える場合は、手取り額から33万円を差し引いた全額が差し押さえ対象となります。

税金の滞納による差し押さえの計算方法は養育費の場合とは異なります。

税金滞納の場合、給与総額から法定控除を行った後、生活維持費として本人に10万円、扶養家族1人につき4万5,000円を差し引いた残額の約20%が手元に残る計算方法が適用されます。

養育費や税金を滞納している場合は、通常よりも手元に残る金額が少なくなるため、特に注意が必要です。

給料差し押さえは会社に必ずバレる?通知の仕組みと解雇の可能性

給料の差し押さえで最も心配なことの一つが、職場への影響ではないでしょうか。

手続きの仕組み上、差押が行われる際には会社への通知が不可欠であり、秘密にしておくことは不可能です。

この事実を知ると、会社での立場が悪くなったり、最悪の場合解雇されたりするのではないかと不安に思うかもしれません。

しかし、法律では従業員の権利も保護されています。

ここでは、差し押さえが会社に知られる仕組みと、それを理由とした解雇の可能性について解説します。

裁判所から会社へ「債権差押命令」が届くため発覚は避けられない

給料の差し押さえは、裁判所が会社(第三債務者)に対して「債権差押命令」という書類を送付することで実行されます。

この命令書には、対象となる従業員の給料から一定額を天引きし、債権者に直接支払うよう指示が記載されています。

会社は給与計算を行うために、この通知を確認せざるを得ません。

したがって、経理担当者などを通じて、給料が差し押さえられた事実は必ず会社に知られることになります。

会社に通知せずに手続きを進めることはできません。

差し押さえを理由に会社が従業員を解雇することは法律上できない

給料を差し押さえられたことが会社に知られても、それを直接的な理由として従業員を解雇することは法律で認められていません。

労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効であると定めています。

個人の金銭トラブルは、基本的に業務遂行能力とは無関係であるため、差し押さえだけを理由とした解雇は「不当解雇」にあたる可能性が極めて高いです。

ただし、会社からの信用を失うなど、間接的な影響が出る可能性は考慮しておく必要がありますが、退職を強要される法的な根拠はありません。

【原因別】差し押さえの流れと適切な対処法の違い

給料差し押さえは、その原因が借金なのか、税金なのか、あるいは養育費の未払いなのかによって、手続きの流れや適用される法律、そして取るべき対処法が異なります。

例えば、借金の場合は裁判所を通じた手続きが必要ですが、税金滞納の場合は裁判所を経ずに役所が直接差し押さえを行えます。

それぞれの理由に応じた特徴を理解し、自身の状況に合った最も適切な対処法を選択することが、問題解決への近道です。

ここでは、主な原因別に差し押さえの流れと対処法の違いを見ていきます。

借金やローンを滞納した場合の差し押さえ

消費者金融からのキャッシングや銀行のカードローンなどの借金を滞納した場合、債権者は裁判所に訴訟を起こし、判決などの「債務名義」を得てから差し押さえを申し立てます。

この場合、前述の通り、督促、裁判所からの通知、そして差押命令という流れをたどります。

対処法としては、差し押さえを受ける前に弁護士などに相談し、任意整理や自己破産といった債務整理手続きを行うのが一般的です。

債務整理を開始すれば、債権者からの督促や差し押さえ手続きを止めることができます。

税金や国民健康保険料を滞納した場合の差し押さえ

住民税や固定資産税、国民健康保険料などの税金を滞納した場合、役所は裁判所を通さずに、国税徴収法に基づいて自らの権限で財産を差し押さえることができます。

これを「滞納処分」と呼びます。

そのため、借金の場合よりも迅速に、督促状の送付から短期間で差し押さえに至るケースが多く見られます。

対処法としては、差し押さえの通知が届いたらすぐに役所の担当窓口へ出向き、分割での納付や納税の猶予が受けられないか相談することが重要です。

誠実に支払いの意思を示すことで、強制的な処分を待ってもらえる可能性があります。

養育費の不払いによる差し押さえ

離婚時の調停や公正証書で取り決めた養育費の未払いがある場合、権利者は家庭裁判所の手続きなどを通じて差し押さえを申し立てることができます。

養育費は子どもの生存に関わる重要な権利であるため、法律上非常に強力に保護されています。

前述の通り、差し押さえ可能な金額の上限が手取りの2分の1までと高く設定されているほか、将来にわたって発生する養育費についても差し押さえが可能です。

公正証書での将来債権の予備的差押えについては「公正役場での離婚証書の作成と将来債権の予備的差押え」で詳しく紹介しています。

対処法としては、支払いが困難な事情がある場合、家庭裁判所に「養育費減額請求調停」を申し立て、支払い可能な金額に変更してもらうなどの手続きを検討する必要があります。

手遅れになる前に!給料差し押さえを回避・停止するための具体的な3つの対処法

裁判所や債権者から差し押さえに関する通知が届いたとしても、すぐに行動を起こせば、まだ回避または停止できる可能性があります。

重要なのは、通知を無視せず、自身の状況に合わせて適切な対処法を選択することです。

具体的には、債権者と直接交渉する方法や、法的な専門家の助けを借りる方法、公的機関に相談する方法などがあります。

差し押さえという最悪の事態を避けるために、ここでは今すぐ実行できる3つの具体的な対処法を解説します。

対処法1:【差し押さえ前】支払いが難しい旨を正直に債権者へ相談する

裁判所からの通知が届く前の段階であれば、まずは債権者に直接連絡を取り、支払いが困難な状況であることを正直に伝えることが有効です。

無視を続けると、債権者は機械的に法的手続きを進めるしかありません。

しかし、こちらから連絡し、返済の意思があることを示した上で、一時的な返済額の減額やスケジュールの見直しを相談すれば、交渉に応じてくれる可能性があります。

この初期段階での誠実な対応が、差し押さえを回避する鍵となります。

対処法2:【差し押さえ前後】弁護士や司法書士に相談して債務整理を行う

借金の返済が根本的に難しい状況であれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、債務整理を検討するのが最も確実な方法です。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などの手続きがあります。

専門家が代理人として手続きを開始すると、債権者からの取り立てや差し押さえは法的に停止されます。

すでに差し押さえが始まってしまった後でも、自己破産や個人再生の手続きを行えば、進行中の差し押さえを中止させることが可能です。

対処法3:【税金滞納の場合】役所の窓口で分割払いや納税の猶予を申請する

税金の滞納が原因で差し押さえの通知が届いた場合は、速やかに市区町村役場の納税課などの担当窓口へ相談に行きましょう。

税金は自己破産をしても免除されないため、支払い義務は残ります。

しかし、災害や病気、事業の廃止といった特定の事情がある場合には、申請によって納税が1年間猶予されたり、分割での納付が認められたりする制度があります。

支払う意思があることを示し、現在の収入状況などを正直に説明して、現実的な納税計画を一緒に立ててもらうことが重要です。

給料の差し押さえに関するよくある質問

給料の差押という事態に直面すると、多くの疑問や不安が浮かんでくるものです。

ここでは、特に多くの方が抱える質問について、簡潔に解説します。

給料の差し押さえは、会社にバレずに手続きを進めることはできますか?

できません。

給料の差し押さえは、裁判所から会社に「債権差押命令」が送付され、会社が給料から天引きして債権者に支払う仕組みです。

そのため、会社に通知せずに手続きを進めることは不可能です。

経理担当者などを通じて、必ず会社に知られることになります。

差し押さえの通知が裁判所から届きましたが、今からでも回避する方法はありますか?

はい、方法はあります。

裁判所からの通知が届いた段階でも、速やかに債権者と交渉し、返済計画に合意できれば、差し押さえの申し立てを取り下げてもらえる可能性があります。

また、弁護士に依頼して債務整理手続きを開始すれば、法的に差し押さえを停止させることが可能です。

ボーナス(賞与)や退職金も給料と同じように差し押さえの対象になりますか?

はい、ボーナス(賞与)や退職金も給料と同様に「給与債権」と見なされるため、差押の対象となります。

差し押さえの上限額の計算方法は月々の給料と同じで、原則として手取り額の4分の1までが対象です。

退職金についても同様のルールが適用されます。

まとめ:給料差し押さえの通知が来たら、一人で悩まず専門家へ相談を

給料の差し押さえは、ある日突然行われるものではなく、法的な段階を踏んで実行されます。

通知が届いたとしても、決して手遅れではありません。

まずは冷静に自身の状況を把握し、債権者への連絡や役所への相談、弁護士などの専門家への相談といった具体的な行動を起こすことが重要です。

一人で問題を抱え込まず、適切な窓口に相談することで、差し押さえを回避し、生活を再建するための道筋を見つけられます。

この記事を執筆している司法書士

いなげ司法書士事務所 豊島裕也
いなげ司法書士事務所 豊島裕也司法書士・行政書士
千葉司法書士会:登録番号第867号
認定司法書士:法務大臣認定第204047号
千葉県行政書士会:登録番号第02103195号

経歴:平成16年に個人事務所を開業。債務整理や裁判、登記業務を中心に20年以上の実務経験。解決実績は1万人以上。

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