債権者とは?債務者との違いや持つ権利、破産時の対応までわかりやすく解説

「債権者」と「債務者」、どちらがお金を貸した側か分からなくなったり、契約トラブルの際に自分の立場がどちらなのか、相手に対して何を請求できるのかが不明確で悩んだりすることがあります。
この記事を読めば、法律上の「債権者」と「債務者」の立場を正確に特定でき、その立場に基づいて次に取るべき支払い、回収手続き、あるいは専門家への相談といった具体的な行動を判断できるようになります。
この記事でわかること
- 債権者と債務者の法的な役割および立場の違い
- 強制執行などの強力な権能と時効消滅を防ぐポイント
- 未払い発生時に段階を踏んで債権を回収する手順
- 相手が自己破産した際に配当金を受領するための対処法
全4ステップで把握する債権者への対応手順および解決までの全体像
債権者としての権利を適切に行使し、問題を解決するためには、体系的な理解が不可欠です。
まずステップ1で債権者と債務者の法的な立場と違いを明確に把握します。
次にステップ2で法律が債権者に認めている具体的な権利内容を理解し、ステップ3で返済が滞った際の法的な回収手続きの流れを学びます。
最後にステップ4として、万が一債務者が自己破産した場合の適切な対処法を確認することで、あらゆる状況に対応できる知識を身につけます。

ステップ1:債権者とはどのような立場かを理解し債務者に対する法律上の違いを把握する
債権者とは、特定の人(債務者)に対して、お金の支払いや物の引き渡しといった特定の行為(給付)を法的に請求できる権利(債権)を持つ人のことです。
金銭の貸し借りにおける貸主が典型例ですが、商品の売買における代金を請求する販売者や、サービスの提供後に報酬を請求する事業者も債権者にあたります。
このように、契約関係に基づいて相手方に何らかの作為または不作為を要求できる立場にあるのが債権者です。

確認事項:相手へ金銭支払いを法的に請求できる債権者の定義
債権者とは、民法上、特定の人(債務者)に対して特定の行為(給付)を請求する権利(債権)を有する者を指します。
最も分かりやすい例は金銭消費貸借契約における貸主であり、借主に対して貸したお金の返還を請求する権利を持ちます。
しかし、金銭の貸し借りに限りません。
例えば、商品を掛けで販売した企業は、買主に対して売買代金の支払いを請求する権利を持つ債権者となります。
このように、契約など法律上の原因に基づいて、他人に対して財産的な請求が可能な立場にあるのが債権者です。
よくある失敗:金銭を借りた債務者側の立場を取り違えてしまうミス
「債権者」と「債務者」の立場を混同してしまうケースは少なくありません。
両者の違いは、権利を持つ側か、義務を負う側かという点にあります。
「債権者」は債務を履行するよう要求する権利を持つ側です。
「債務者」は契約内容に従って債務を履行する義務を負う側を指します。
漢字の意味から、「権利を持つ者=債権者」「義務を負う者=債務者」と覚えることで、立場の取り違えを防ぐことができます。
補足情報:担保の有無により分類される債権者の種類
債権者は、担保の有無によって大きく二つに分類されます。
一つは、特定の財産を担保として確保していない「一般債権者」です。
これに対し、不動産に抵当権を設定している金融機関のように、債務者の特定の財産から他の債権者に優先して弁済を受けられる権利(担保権)を持つのが「担保権者(別除権者とも呼ばれます)」です。
債務者が破産した場合、担保権者は破産手続きとは別に担保権を実行して債権を回収できるため、一般債権者よりも強力な立場にあります。
ステップ2:法律に基づいて債権者に認められている強力な権能を把握する
債権者は、債務者が任意に支払いを行わない場合、法的な手段に訴える強力な権能を持っています。
まず、裁判所に訴えを提起し、判決などの債務名義を得ることで、国に対して強制的に債権を取り立ててもらう権利が認められています。
これを強制執行といい、債務者の給与や預金、不動産などを差し押さえることが可能です。
このように、債権者は単に請求できるだけでなく、最終的には国家権力を用いて権利を実現できる立場にあります。

確認事項:債務者の財産へ給付を求める法的な請求権
債権者が持つ最も基本的な権利は、債務者に対して契約通りの履行を求める「履行請求権」です。
もし債務者が支払期日を守らないなど債務不履行の状態に陥った場合、債権者は本来の給付に加えて、それによって生じた損害の賠償を求める「損害賠償請求権」も行使できます。
さらに、契約の目的が達成できないと判断される場合には、「契約解除権」を用いて契約そのものを解消することも可能です。
これらの権利を実効性あらしめる最終手段が、裁判手続きを経て債務者の財産を差し押さえる強制執行です。
よくある失敗:時効期間の経過により請求権を消滅させてしまうミス
債権は、一定期間行使しないままでいると時効によって消滅し、法的に請求する権利を失ってしまいます。
これを消滅時効といいます。
民法の規定により、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間行使しない場合に時効が完成します。
時効の完成を阻止するためには、裁判上の請求を行ったり、相手に債務を承認させたりする必要があります。
長期間放置してしまうと、回収できるはずの債権を失うリスクがあるため注意が必要です。
債務承認については「債務承認と時効リセットのNG行為」で詳しく紹介しています。
補足情報:債権譲渡によって請求を行う主体が変更される仕組み
債権は財産権の一種であるため、原則として自由に第三者へ譲渡することが可能です。
これを債権譲渡と呼びます。
例えば、企業が資金繰りのために売掛債権をファクタリング会社に売却したり、金融機関が回収困難な貸付債権を債権回収会社(サービサー)へ譲渡したりするケースがこれにあたります。
債権が譲渡されると、元の債権者から債権を譲り受けた者が新たな債権者となり、債務者に対して請求を行うことになります。
債務者にとっては、請求してくる相手が変わるという結果が生じます。
債権譲渡通知書については「債権譲渡通知書の書き方と対処法」で詳しく紹介しています。
ステップ3:返済が滞った際の法的な債権回収手続きを進める
債務者からの返済が滞った場合、債権者は法的な手続きに則って債権回収を進めることになります。
まずは電話や書面による督促といった任意交渉から始めますが、それでも支払いがない場合は、法的な強制力を伴う手続きへ移行します。
具体的には、内容証明郵便による催告で心理的な圧力をかけ、次に支払督促や訴訟といった裁判所を通じた手続きに進み、最終的に強制執行によって債務者の財産を差し押さえるという流れが一般的です。

確認事項:内容証明郵便の送付から強制執行の申立てに至る一連の流れ
法的な債権回収は段階的に進められます。
第一段階として、配達証明付きの内容証明郵便を送付し、請求の事実とこちらの強い意思を記録に残します。
これに応じない場合、第二段階として、裁判所に「支払督促」の申立てや「民事訴訟」を提起します。
ここで勝訴判決などの債務名義を取得すれば、最終段階である「強制執行」の申立てが可能です。
強制執行では、裁判所が債務者の給与債権、預金債権、不動産などを差し押さえ、そこから強制的に債権を回収します。
強制執行については「強制執行の仕組みと流れ」で詳しく紹介しています。
よくある失敗:相手の財産状況を調査せずに差し押さえ手続きを実行するリスク
訴訟で勝訴し債務名義を得たとしても、差し押さえるべき債務者の財産がどこに、どれだけあるか分からなければ強制執行は空振りに終わります。
これを「執行不能」といいます。
例えば、預金口座を差し押さえても残高がなければ意味がありません。
このようなリスクを避けるためには、訴訟提起前や強制執行申立て前に、弁護士会照会制度などを利用して、相手の財産状況を可能な限り調査しておくことが極めて重要です。
また、執行力のある債務名義を得た後には、財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用して財産状況を調査することも可能です。
差し押さえについては「差し押さえの回避方法と対象」で詳しく紹介しています。
補足情報:自力回収が困難な事案で司法書士などの専門家へ相談する利点
債権回収には法律の専門知識と煩雑な手続きが伴い、個人や一企業で行うには限界があります。
特に相手方が支払いを拒否し続ける場合や、法的手続きが必要になった際は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することが有効です。
認定司法書士であれば、元金140万円以下の簡易裁判所における民事事件について代理人として交渉や訴訟を行えます。
専門家に依頼することで、適切な手続きを迅速に進められるだけでなく、精神的な負担を大幅に軽減できるというメリットがあります。
ステップ4:債務者の自己破産開始決定が下された事態へ適切に対処する
取引先や貸付先である債務者が裁判所から自己破産の開始決定を受けた場合、債権者の対応は破産法という特別な法律のルールに従う必要があります。
この決定が下されると、それまで行っていた個別の取り立てや強制執行はすべて禁止されます。
債権者は、裁判所が選任する破産管財人が進める破産手続きの中で、他の債権者と平等に、債務者の財産から配当を受けることによってしか債権を回収できなくなります。

確認事項:破産手続き開始に伴い個別の強制執行が法的に禁止されるルール
債務者について破産手続開始決定がなされると、個別の債権者が自身の権利を優先的に実現しようとすることを防ぎ、全債権者の平等を確保するため、新たな強制執行や仮差押え、仮処分は禁止されます。
これを「個別執行禁止効」と呼びます。
また、すでに開始されていた強制執行手続きもその効力を失います。
債権者は、破産という法的な枠組みの中で、裁判所の監督のもとで行われる配当手続きに参加することでしか、債権の満足を得ることができなくなります。
よくある失敗:破産申し立ての事実を知りながら直接取り立てを強行する違反
債務者が破産を申し立てた、あるいは破産手続開始決定を受けたという事実を知りながら、電話や訪問による直接の取り立てを続ける行為は、破産法の趣旨に反するだけでなく、重大な問題を引き起こします。
もし一部の債権者だけが弁済を受けると、他の債権者との公平性が害されるため、破産管財人によってその弁済が取り消される「否認権」行使の対象となり得ます。
強引な取り立ては、法的に無効とされるリスクを伴うため、絶対に避けるべきです。
補足情報:配当金を受領するために裁判所へ提出する債権届出の手順
債務者の財産から配当を受けるためには、債権者は自らの債権の存在と額を裁判所に届け出る必要があります。
これを「債権届出」といいます。
通常、裁判所から債権者に対して破産手続開始の通知とともに債権届出書が送付されます。
債権者は、この届出書に債権の種類、発生原因、金額、残高などを正確に記載し、証拠書類の写しを添付して、定められた期間内に裁判所へ提出しなければなりません。
この届出を怠ると、配当を受ける権利を失ってしまうため、非常に重要な手続きです。
債権者とは何かに関する疑問を解消するよくある質問
ここでは、債権者に関してよく寄せられる質問について、簡潔に回答します。
債権者とは貸主側あるいは借主側のどちらを意味しますか?
債権者とは、お金などを貸した「貸主側」を指します。
法律上、相手方(債務者)に対してお金の返還やサービスの提供といった特定の行為を請求する権利を持つ人のことです。
反対に、お金などを借りた「借主側」は、返済する義務を負う「債務者」となります。
債権者から一括返済を求める督促状が届いた際はどう動くべきですか?
まずは無視せず、督促状の内容を正確に確認してください。
身に覚えのない請求や金額に相違がある場合は安易に連絡せず、弁護士などの専門家に相談することが重要です。
連絡することで時効の利益を失う可能性があります。
返済義務がある場合は、分割払いの交渉が可能か検討を依頼しましょう。
受任通知については「受任通知の効力と対処法」で詳しく紹介しています。
債務者が破産した場合に債権者は貸付金を全額回収できますか?
全額回収できる可能性は極めて低いです。
債務者が破産すると、その保有財産は裁判所が選任した破産管財人によって換価され、法律で定められた優先順位に従い、全債権者へ債権額に応じて公平に分配(配当)されます。
多くの場合、配当率は数パーセント程度にとどまります。
まとめ
債権者とは、債務者に対して金銭の支払いや物の引き渡しなどを請求する権利を持つ立場の人を指します。
両者の違いを正確に理解することは、あらゆる取引の基本です。
債務不履行が発生した場合、債権者は内容証明郵便の送付から訴訟、強制執行といった法的手続きを進める権利を持ちますが、権利には時効がある点に注意が必要です。
また、債務者が破産した際は個別の取り立てが禁止されるなど、特別なルールに従う必要があります。
これらの知識は、自身の権利を守り、適切に行動するために不可欠です。
この記事を執筆している司法書士

- 司法書士・行政書士
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千葉司法書士会:登録番号第867号
認定司法書士:法務大臣認定第204047号
千葉県行政書士会:登録番号第02103195号
経歴:平成16年に個人事務所を開業。債務整理や裁判、登記業務を中心に20年以上の実務経験。解決実績は1万人以上。
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